【求職日記 ♯7】就労移行支援B型へ、いざなわれる

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前回応募した会社から、一次選考に受かったという連絡が返ってきた。

その会社に送った履歴書には、「コツコツと何かをやることが得意で、精神安定剤代わりに始めた登山をコツコツとやっていると、ニュージーランドの山々を1300km歩くことができた」とか「英語が話せる」ことなど、とにかく、ありとあらゆることをアピールした。

だから一次選考は受かるんじゃないかと思っていた。

問題はこの次だ。

二次選考という名の面接がある。

面接の日程を決めて、「それではまた当日、よろしくお願いいたします」とメッセージを打ち込み、スマホの画面を切った。

その日から、面接の日まで一週間、ずっと緊張していた。

というのも、ちゃんとした会社の面接を受けるのが、人生初めてだったからだ。

アルバイトを除くと、僕は一社でしか働いたことがない。そしてその会社は、履歴書不要で、面接時も「カジュアルな服装でいいよ」という、ものすごく自由でゆるい場所だった。

今回は、「株式会社〇〇」という名前の株式会社だ。

求人のページには「ネイル・ヒゲOK」「髪型・服装自由」と書いてあったけど、面接のときぐらいはスーツを着たほうがいいのだろうかと、悩んでいた。面接時の服装については、とくに何も指示がなかった。

悩んでも、経験のない僕にはわからないので、ネットで検索してみる。

すると、Yahoo知恵袋に「面接のときは、私服で来ていただいて構いませんと言われたのですが、スーツで行くべきでしょうか?」という質問があった。

???

「私服で来ていただいて構いません」と言われてるんなら、いいんじゃない?と思って画面をスクロールし、回答欄をのぞいてみた。

すると「私服で来ていただいても構いませんと言われたとしても、ちゃんとした格好で行くのがマナーですから、スーツが望ましいと思います」「TPOにあった服装ができているかどうか、見られてますよ」とあった。

!??

どういうこと!?

気が遠くなりそうだった。

なんだそれは。

社会人は、本来やるべき業務と並行して、いたるところに張り巡らされた罠を解除しながら慎重に進む、罠解除士としても生きないといけないのか。

「私服で構いません」は「私服でいってもいい」という意味じゃないのか。

本当に意味がわからなくて、頭が沸騰しそうだった。

とりあえず、落ちたくないのでスーツで受けることにした。

ずっと前に買ったGUのワイシャツを漂白剤で真っ白にする。

Youtubeでネクタイの結び方も習得した。Youtubeの中の人が、ネクタイの太い側と細い側をそれぞれ「大剣(だいけん)と小剣(しょうけん)」と読んでいた。

スーツで仕事をしたことがない僕には、それが難解な専門用語のように聞こえて、「自分には無理なんじゃないか」とクラクラしてくる。

ちなみに、面接はWeb面接だった。

そこで悩むのは、ズボンを履くかどうかだ。

もしかしたら面接官に「ちょっと立ってもらえますか」と確認されるかもしれないので、履くことにした。

そして、緊張の面接当日がやってきた。

15分前から入室できるみたいだったので、15分前に入室した。

そして自分の顔が写ったビデオを見ながら待っていると、男性の面接官が入室してきた。

前回の英語の面接時とは違って、笑顔は一切見せない、ちょっと怖い雰囲気の面接官だった。

ドキドキしながらも質問に答える。

質問の内容は「どうして前の会社をやめたか」「無職の間は何をしていたか」「タイピングのスキルはどのくらいか」「ワードやエクセルは使えるか?」「精神疾患の症状はいま現在はどんな感じか」などだった。

精神疾患の状態について聞かれたときに「薬さえ飲んでいれば、問題ないです」と答えると、「突っ込んだ質問で申し訳無いのですが、もし薬を飲まなかったら、どんな症状が現れますか?」と返ってきた。

僕は「薬は頭をぼかしてくれるものなので、もし飲まなかったら、ものすごく過敏になって不安が高まり、胸が苦しくていてもたってもいられなくなります」と答えると、面接官は「うんうん」といった表情で反応を返してきた。

それを見て「怖い雰囲気だった面接官が、僕の話を聞いてくれている!」と思い、もっと何か喋りたくなった。一年以上無職で、人とのコミュニケーションに飢えていたからだ。そして僕は続けた。

「そうなんです。そして、それがどんどん酷くなると、脳がそんな感情でいっぱいになって、自分で自分を傷つけずにはいられなくなります。そして…」

ふと、面接官を見ると、少し驚いた表情をしていた。

「しまった。言い過ぎた」と思い、僕はそこでやめた。

そして30分予定だった面接が15分で終わった。

面接官によると、結果は一週間以内に電話で伝えられるということだった。

後半、ちょっとミスをしたけど、とりあえず面接を終えた!

ホッとして、その後はお酒を飲んだ。

それからは毎日ドキドキしながら過ごした。というのも、僕は電話が苦手だからだ。とにかく毎日落ち着かなかった。

そして面接から5日後、電話がかかってきた!

「はい、もしもし!」と元気に電話に出る。相手の方はこの間の面接官ではなく、女性の方だった。

お互いに「お世話になっております」と前置きを言い、そして彼女が面接の結果を伝え始めた。彼女のトーンは暗かった。

そして予想通り「残念ながら、今回は…」という言葉が出てきた。

「落ちたか!」と思いながら、「わかりました、ご連絡ありがとうございました」と返し、電話を切ろうと思っていたら、彼女が「ちなみに」と切り出した。

「ちなみに、B型作業所の就労移行支援はご存知でしょうか?」

「わたくしたちの会社は、就労移行支援B型の事業もやっていまして、就労スキルを身につけるための作業所で、3Dモデラーやアニメーション作業などのスキルを学習することもできます」と教えてくれた。

ちなみにここで説明すると、精神障害を含めたいろんな障害を持つ人が、サポートを受けながら働ける場所が二つある。

一つはA型作業所、もう一つがB型作業所だ。

A型の給与は最低賃金の額であることが多い。だけど、自分と同じように障害を持った者同士で、サポートを受けながら働ける場所だ。

そしてB型の給与はもっと安い。

正確には給与ではなく、工賃と呼ばれるらしい。時給250円とか400円とか、場所によって金額は様々だけど、とにかく最低賃金以下だということは変わらない。

でも、彼女が案内してくれたB型作業所は、企業やフリーランスで働くために、3Dモデラーやアニメーション技術のスキルを教えてくれるところらしい。そしておそらくだけど、わずかに工賃も発生する。

せっかく貰えたチャンスなので、この話をより詳しく聞くための面談を受けることにした。

電話を切ったあとに、送られてきた資料を見ていると、3Dモデラーは「2Dのものを3Dにする」仕事らしい。

「ゲームやアニメが好きな方、大歓迎です」とあって、どっちも僕は興味がないのだけれど、とりあえずやってみてもいいんじゃないかと思った。

パンフレットを見ていると、美少女キャラクターの3Dアバターを作ることが多そうな仕事で、僕は正直あまり好きじゃないけど、新しいことをやってみたいし、やって損することもない。この話を断ったとしても、他に行く道があるわけでもない。

今度の面談でいろいろ話を聞いてみよう。

そしてなにより、この会社のパンフレットに書いてあった言葉が気に入った。

我々は、ほとんどの企業が障がい者雇用に対して戦力として見ていないという現状を変えたいと考えています。
やり方を工夫すれば、障がいを持っていても会社の戦力となることができるのです。

多くの障がい者は、実際に十分なスキルを持っていますが、「通勤」や「対人スキル」といった面でネックを感じています。
しかし、在宅勤務という選択肢を提供することで、このような問題を解消することができます。
さらに、専門的な技術を学ぶことによって、障がい者雇用を単なる雇用の一環ではなく、付加価値のあるポジションに昇華させることができます。

障がいを持っているからといって引け目を感じることなく、堂々と働ける(対等に働ける)環境を作りたいという思いがあります。
私たちは、彼らの能力や人格を尊重し、彼らが自信を持って仕事に取り組むことができる環境を創り出したいのです。
そして彼らの情熱や興味を活かし、仕事を通じて充実感を得ることができるような環境を目指しています。

ちなみに「求職日記 ♯5」で応募していた、オーディオブックの仕事は、一次審査で落ちていた。

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著者

栃木県在住の35歳。

34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越し、ヘルパーの仕事をやめて無職になる。躁うつ病(完解済み)・同性愛・発達障害グレーゾーン当事者。趣味は登山で、ニュージーランド1300kmの歩き旅を終えたばかり。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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