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【房総半島 ♯1】千葉県の海岸線沿いをゆく3泊4日の歩き旅

山旅と自転車旅はやったことがある。でも、地上の歩き旅はない。どんなものなのか知りたくて、千葉県・房総半島の海岸線沿いを3泊4日で歩いてきました。

もくじ

1日目

朝7時半、家を出発する。

自分の住んでいる栃木県からこの旅のスタート地点まで、電車を乗り継いで行く。合計3時間半の電車旅からはじまった。

スタート地点の「東金駅」に到着。

海岸線に出るには、あと10km歩かないといけないけど、なんとなく海の匂いがするような気がした。いよいよ旅がはじまる。

はじめての千葉県だったけど、夏の厳しい日差しにやられながら、ただ足元を見て歩いていると「ここがどこか」というのがどうでもよくなる。

梅雨の時期なので、雨じゃないのは嬉しかったけど、晴れていると暑くて「この旅は大丈夫だろうか」と思った。

夏の暑い中、がんばって歩いていると高校時代の部活を思い出す。あの時は、休憩の合間に飲むスポーツドリンクが、天国からしたたり落ちる神の水のように感じていた。そして用水路の汚い水を見ても、「飲みたいな…」と欲求に押されて、のどがゴクリと鳴っていた。

そしていまも、この用水路の水に魅力を感じながら歩いている。

海の気配がした。

太平洋だ。

太平洋は、昔住んでいた愛媛県の瀬戸内海と違って、波が荒れている。なんとなくスケールの大きさを感じた。

この広くて長い砂浜を「九十九里浜くじゅうくりはま」というらしい。66km続いているそうだ。サーフィンをしている人が多かった。そして、散歩をしている人もちらほら見る。

この長い砂浜をとぼとぼと歩いた。風が吹くと、砂が舞って、砂浜に模様ができる。貝がたくさん転がっている。なんとなく気分が憂鬱だった。

愛媛県から栃木県に引っ越してきて、2か月が経つ。

こっちには友達がいないし、無職生活をしているので、暇な時間が多い。毎日がなんとなく終わっていく。念願の無職生活。その間にやりたいことをたくさんやろうと、この歩き旅をやっているのだけど、空虚な感じが胸を抜けない。気合が入らない。

この広大な世界を一人で歩きながら、ふと「自分は何をしているんだろう」と思ったときに一瞬顔をのぞかせる恐怖に、気付かないふりをしながら歩いた。

今夜の宿を探さないと。

道沿いに「素泊まり 3000円」という看板の民宿があった。

ここにしよう、と思った。チャイムを鳴らすとおばちゃんが出てきて「今夜、泊まりたい」ということを伝えた。「一人で宿泊の場合は3500円になって、更に税金かかるから3850円になる」ということだった。

「ちょっと考えます」と、いったんその場を離れた。

もう少し歩いた先にあるネットカフェにしよう。そこなら、もう少し安いし、ドリンクバーでコーラを好きなだけ飲める。

そう思って再び歩き始めた。

ネットカフェに行く前に、最後に海を見ようと砂浜を歩いていた。砂浜を歩く人にあいさつをしていたら、二匹の犬を散歩させているおじちゃんがたくさん話しかけてくれた。

僕の出身が愛媛だと伝えると、「車で四国八十八カ所巡りした」ということを教えてくれた。そして巡っている間、毎回お寺で「宝くじが当たりますように」とお願いをしていたら、本当に、年末ジャンボの二等があたったそうだ。

そして話し込んでいると、おじちゃんが「今夜、ウチに泊めさせてあげる」といってくれた!!

まさか、こんなことになるとは。「旅っぽくなってきた」と、犬二匹と一緒におじちゃんの車に乗り込む。

車内でいろんな話を聞いた。いままで、こんなふうに誰かを家に泊めたことや、ヒッチハイクをしている人を乗せたことがあるらしい。前に人を泊めたときに、その人に家のものを盗まれたらしいので「免許証を見せてくれ」といわれて、見せた。

そして電話番号も交換した。

おじちゃんの家の敷地内にある小屋に泊めさせてもらった。麻雀部屋ということだった。「奥さんには内緒で、僕を泊めさせてあげる」ということだったので、奥さんにバレないかひやひやしながら過ごした。

カレーうどんも作ってくれた。食べたあとは、奥さんにバレたらいけないので、電気を消して小屋にただ潜んでいた。

窓を全開にしていたのだけど、小屋の中が異常に暑くて、なかなか眠れずに翌日を迎えた。明け方3時ごとになると気温も大分下がってきて、やっと眠れた。

2日目

翌朝、犬二匹とおじちゃんの車に乗り込んだ。

昨日の砂浜を犬と一緒に散歩した。そのあと「ここから7キロ先の国道まで車で運んであげる」ということだったので車に乗り込んだ。

本当はこの砂浜から出発したかったけど、言い出せなかった。だけど、ヒッチハイクのような経験ができるし、それもいいかなと思った。

「いすみ市」の手前で降ろしてもらった。

おじちゃんにお礼をいったあと、出発する。

昨日は泊めてもらってありがたかったけど、自由に外に出られなかったから、この外を自由に歩ける解放感が気持ち良かった。

歩いていて、気持ち良かった。途中で、何人かの人が声をかけてくれて、少し話しこんだりした。

気持ち良くて爽やかな天気だったけど、暑くもあったので山のなかに避難した。

お昼ご飯はスーパーで買って、近所の公園で食べた。公園の中にベンチがなかったのでシーソーの上で食べる。

そして、また歩く。

この日は特になにもなく、目的地の街に辿り着いた。

そして、予約していた激安ホテルに到着する。

受付のお姉さんがものすごく親切でホッとした。そして階段をあがり二階に行く。部屋に入り、二日ぶりの快適な空間に歓喜した。

ゆっくり眠れる部屋がある!冷房がある!テレビもある!テーブルに布団がある!窓から海が見える!

「こんな豪華な部屋に泊っていいのだろうか」と最高の気分で横になった。

そして、冷房をガンガンつける!

たまらない。もう6月の終わりだけど、まだ家では我慢して冷房を使っていなかった。

そして、宿の共用のお風呂で身体をきれいにして、部屋に戻る。「最高!」しか言葉が出てこない。

もう汗をかきたくなかったので、明日の朝まで部屋に閉じこもろうと思ったけど「せっかく旅に出ているのに、もったいないな」と思い、近所のスーパーへ行った。

すると、スーパーの入り口に人だかりができている。えっ、誰か倒れたのか?と思い近寄ってみると、タレントさんがテレビの取材でそのスーパーを歩いているみたいだった。

中に入ると、テレビのスタッフさんが6人ぐらいが、そのタレントさんを囲っていた。

「おぉ、おもしろい状況に出くわしたなぁ」とニヤニヤしながら今夜の晩御飯を選んでいた。すると、近くにうれしそうな表情をしたおばあちゃんがいたので話しかけてみた。

「テレビの取材ですかね?」と尋ねると、「そうみたいね!〇〇くん、テレビで見るよりもスリム!」と照れながら僕に返してくれた。

僕も何故か「そうですね!」と照れながら返した。そして二人でキャッキャしながら、その雰囲気を楽しんだ。

宿に帰る途中、電話が鳴った。

昨日泊めてくれたおじちゃんだった。どこまで行ったか、今夜どこに泊まるのかなどを聞かれたので伝えた。

すると「ダメだよ、宿なんか泊まっちゃ。旅なんだから、誰かのお宅に泊めてもらわないと」「あんたは度胸がないんだから、道行く人に尋ねて度胸をつけないと」「旅にお金使ってどうするんだよ」といろいろ言われた。

「それは僕の勝手じゃないですか?」と返したけど、話が進まなかった。

電話を切ったときには、もう宿の玄関に着いていた。

昨日は家に泊めてもらったし、人とうまくやらないといけないなと思っていたけど、部屋に入った途端「しんどっ!」と声が出た。

気分が沈み、いろいろと考え込んだ。

そんな気分のときに見たテレビ番組の内容が、妙に頭に残った。

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著者

栃木県在住の34歳。
34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越したばかり。仕事もやめて、無職になる。同性愛者・躁うつ病患者(現在は寛解している)。趣味は登山。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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