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【テアラロア Day14】テアナウの街で久しぶりの文明を味わう

もくじ

晴れがいい

みんな、一人ずつハットを出ていった。

今朝、フランスから来たティーボーが「今日は晴れてるよ!」と僕に伝えに来てくれた通り、久しぶりに外が晴れていて、心がホッとした。

昨日は気持ちが落ち込んでいたからか、雨が降っていたからか、目の前に広がる景色がとてもきれいだ。

ニュージーランドの北島の北から、南島の南まで3000km歩いた人の話によると、その3000kmのなかで雨が降ったのはたったの三日だったということだった。

僕がニュージーランドに来てから、二週間のうち5日は雨が降っている気がする。これから上向きになるといいな。

はじめてのヒッチハイク

牧場を少し歩くと国道に出る。

そして今日はなんといっても人生初のヒッチハイクをしないといけない日だ。

映画でたまに見るアレだ。まさか自分がすることになるとは思ってもみなかった。

国道に出て、路肩にスペースのある場所まで歩く。そしてザックを置く。

あぁ、ドキドキする。

遠くから一台、車が来たのが見えたので、左手をあけて、グッドサインをつくる。

あぁ、緊張する。

「これで合っているんだろうか」と思いながら、あげた左手を空中に維持する。意外と腕が疲れる。

車が近づいてきた。

ちなみに、目線はどうしたらいいんだろう。ドライバーを見つめた方がいいのか、それともプレッシャーを与えないためにあまり見ない方がいいのか。

どっちかわからないので、半分ずつ取り入れた。挙動不審に見えていないかな。

そして、最初の一台が颯爽と過ぎ去っていった。

あぁ、去っていったけど、達成感を感じる。そのままドキドキしたまま、グッドサインを掲げ続けた。

あれ…?

一向に捕まらない。

もっと簡単に捕まるかなと思っていたけど、予想外にたくさんの車が素通りしてゆく。

でも中には、車の中から手を挙げて応援してくれる人もいた。嬉しいんだけど、ちょっと違う。

だんだん自分がみすぼらしく思えてきた。ずっと立っているので身体が冷える。僕は何をやっているんだろう。

「やり方がいけないんだ、紙に行き先を書いて掲げよう」と思い、ザックから紙とマジックを出そうとしたときだった。

一台の車が僕の元に戻ってきた。

「こっちにおいで」とジェスチャーをくれた。

「ありがとうございます!」と車に乗り込んだ。

赤ちゃんを連れたアジア系の夫婦だった。昨日、一昨日と二日間、湖のほとりでキャンプをした帰りらしい。ちょっと疲れている様子だったけど、いろいろと話してくれた。

「よくヒッチハイクで人を乗せるんですか」と聞くと、「この通りを通るときは、座席に余裕があったら何人でも乗せるよ」ということだった。

テアナウの中心街に着く前に、その手前にある小さな道の駅のようなところも、徐行しながら案内してくれた。

そして、テアナウの街についた。

お礼として10ドル札と、このために用意したオリジナルの手作りカードを渡そうとすると、二人とも手を横にふって「それは受け取れないよ。だけど、そのカードは頂こうかな」といってくれた。

そして、お礼をいって別れた。

テアナウの街

テアナウは湖のそばにある小さな街だ。

この街でやらないといけない方がたくさんある。

宿を決めて、アウトドア用品店でザックを買い替えて、スーパーで明日からの食材を買って、そして今日のお昼ご飯をレストランで食べる。

とりあえず、車から降りたところに何軒かホテルがあったので、ドミトリーではなくシングルルームは空いていないか聞いてみた。

一軒目は空きがなくて、二軒目はクリスマス価格で一泊4万円ということだった。諦めてネットで探すと、トイレお風呂共有の一泊7000円の宿が見つかったので、そこに決める。

観光客だらけの街並みを歩き、次にアウトドア用品店に行く。

店内をウロウロしていると、ベルとドネックがいた!「おーい!!」と手を大きく振ると、二人の疲れた顔が上に向き、僕に気がついた。

すでにベリーと三人で、街からトレイルに戻っているものだと思っていたので感激して、興奮しながら二人に話しかけた。

ベルは心配そうな顔つきで、僕に両手を広げてくれた。僕は、隣にドネックという彼氏がいるのにハグをしてもいいのだろうかと一瞬躊躇したけど、ベルが「大丈夫、来て」と言ってくれた。

ハグをして、ものすごく心が落ち着いた。嬉しかった。

ベルもドネックも疲れた顔をしている。

ベルもドネックもオランダから来ているので、僕と同じように、ロングトレイルの疲れ以外に、異国にいる心細さも感じているのかもしれない。

二人の話によると、ベリーはテアナウの隣にある別のトレイルを歩きにいったらしい。そして、明日三人でバスを使って、テアラロアのトレイルに戻る予定だということだったので、僕も一緒に乗せてもらうことにした。

そして二人と別れて、店内で新しいザックとストックを買った。

店内で新旧のザックの中身を入れ替える
いままでよりも5L大きいものにした

そのあとはテイクアウトのお店で、ベーコン&マッシュルーム&ステーキパイを買った。

肉がギッシリ詰まっている。たまらない…

たまらなかった。

そして、スーパーで食材を買いホテルへ向かう。

ニュージーランド初日以来、二週間ぶりのホテルだ。

温かいシャワーに洗濯、久しぶりのプライバシー。最高なのは言うまでもない。

ニュージーランドでは400円もするコーラを開ける。

山では食べられなかったバナナや生野菜を思う存分食べる。

そして、ベッドで横になる。

もっとここでのんびりしていたい。自分の身体の疲れと、それが癒えてゆくのを感じていたい。

時間があっという間に過ぎてゆく。この時間が本当に本当に愛しい。

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著者

栃木県在住の34歳。
34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越したばかり。仕事もやめて、無職になる。同性愛者・躁うつ病患者(現在は寛解している)。趣味は登山。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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