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【ロングライド ♯1】瀬戸内海一周400kmを走るはじめての自転車旅

10年前、23歳の頃に初めて自転車旅をしました。
ルートは愛媛→香川→岡山→広島→愛媛で、4泊5日です。
当時は自転車に乗る習慣はありませんでしたが、「なにか旅のようなことがしたい」とネットで自転車を購入。その後しばらく、くすぶっていましたが、仕事での人間関係ストレスがつもり、弾けるように旅に飛び出しました。

もくじ

1日目

いままで自転車で走った最長距離は、せいぜい20kmくらい。

「僕は一体どうなってしまうのか」不安もありました。ですが、人生に疲れていたので「どうなってもいい」という気持ちで家を飛び出しました。

途中、母の家によって別れの挨拶をしてきました。
「本当に、僕はこれからいくのか?」「いけるのか?」という感覚でした。

母は心配そうな顔で、餞別せんべつとして一万円をくれました。母の顔を見て気が引き締まりました。

(実はこの時、四国一周しようと旅に出ていましたが、いろいろあって瀬戸内海一周に変わります。)

松山の家を出発し、隣の市(東温市)に着きました。

このときで、20kmほど。

「これだけでも大した距離だな」と思いましたが、今日はここからが本番。地元のスーパーによって食料を買います。

ちなみに、これが僕の愛車です。

東温市を走っていると、タイヤの空気がだいぶ抜けていることに気が付きました。地元の自転車屋さんに持って行って空気を入れてもらいました。そして、整備士さんが何かに気付いて自転車をいじり始めました。

「前輪のフォークが前後ろ逆についとったよ。だいぶ走りにくかったやろ」と自転車を完全な状態に整備してくれました。ネットで注文して、組み立てを自分でやったので、間違えていたみたいです。

これから走る道の長さを考えながら「あぁ、自転車屋さんに来てよかった!」「タイヤの空気が少なくてよかった!」とホッとしました。

走りにくさは、気が付きませんでした。

しばらく走ると、ラーメンショップがありました。

ここで昼食をとります。

登山用のザックを背負うスタイルだったので、店主の方が「旅しよるんけ?」と話しかけてくれました。「はい、四国一周してきます!」と答えると「すごいな!がんばってな!」と返してくれました。

このときに、「あっ、僕は本当に旅をしているんだ。旅人なんだ!」と嬉しくなりました。

「ごちそうさまでした!」と店をでた後、桜三里さくらさんりという路肩の狭い峠にでました。

もうここから未知の領域です。

誰かの車で通ったことのあるこの場所を、自転車で通るんだと思うと、ゾクゾクしてきました。

峠を越えている最中、雨が降ってきました。

それもゲリラ豪雨のような、激しい雨でした。雨の峠を下りながら、背中からは車やトラックがビュンビュン通り過ぎます!

怖くて怖くて、トラックが通り過ぎるたびに「こけませんように」「事故りませんように」と祈りながら、ハンドルを操る手と肩にギュッと力を込めます。

そして、峠を越えました。

毎分毎分、いままで自分が見たことのない愛媛県の景色が広がりつづけます。ものすごい高揚感を感じました。

そして、70km地点の四国中央市に突入。ちょっと、腹ごしらえにコンビニに入ります。

そして、スマホで今日の宿の予約をします。

善通寺ぜんつうじグランドホテル」という場所を確保できたので、また自転車を漕ぎます。


「知らない街に一人でいるんだ」と心が軽くなり、何でもできるような気分になりました。

日が暮れて…。

香川県に突入です!

「自転車だけで、県をまたいだ!」と興奮気味。でもさすがに疲れがひどく、自転車を降りて路肩に座り込みました。

ここまで100km走っていました。

スマホでホテルまでの距離を確認すると、残り25km。ここまで100km走って感覚がおかしくなっていたので「なんだ、あと25kmか」と軽く見ていました。

ですが、最後の5kmのところで強烈に身体がしんどくなり、1km進むのも、やっとの状態になりました。フルマラソンの最後の5kmが長いと聞くけど、こういうことなのかと理解できました。

そして、ホテルのチェックイン時間まであと30分。
遅刻して怒られるのが怖かったので、身体に鞭を打って激しく自転車をこぎ続けました。(いま考えたら、ホテルに遅れると電話すればいいだけのことなんですけどね)

赤信号で止まるたびに、自転車から降り片ひざに手を当て「ぜぇぜぇ」と荒い呼吸を繰り返します。

そしてホテルに到着…。

すぐにベッドに寝ころびました。

「着いたぁ…」と心で喋りながら、しばらく天井をみていました。そして頑張ってお風呂場まで歩き、入浴を済ませます。

「さて…」

これからどうしようかと地図を広げます。

四国一周が約1000km。今日、自分の限界まで走って126km。そして、残りの日数は4日。これはどう考えても、無理です。

計画が甘かった!

ですが、一度決めたことは何としてもやり遂げたいという性格だったので「四国一周したい!しなければならない!」でも「現実的に不可能」ということでかなり暗く悩んでいました。

そこで友達に電話をしたら、「やりとげたいっていう意思も大事やけど、ときには妥協も大切よ」と教えてくれました。

なかなかそういう風には切り替えられなかったものの、でも、そうするしかない現実を受け入れたとき「ふっ」と心が楽になりました。

「絶対に四国一周する」と考えて、焦り、凝り固まっていた頭に「妥協」というワードが入った瞬間でした。

「残り4日で瀬戸内海を一周するプランなら行ける!」

この状況を受け入れてしまえば、残り4日間焦ることなくゆっくりと自転車旅を楽しめる。

四国一周にこだわらなくても、そもそも、どこにいっても、旅は旅で楽しいものだ。暗い焦りの気持ちで四国一周するより、のんびり明るい気持ちで瀬戸内海を一周したほうがいいじゃないか。

目の前が明るく輝きはじめました。

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著者

栃木県在住の34歳。
34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越したばかり。仕事もやめて、無職になる。同性愛者・躁うつ病患者(現在は寛解している)。趣味は登山。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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