日光旅行の朝、心療内科にいく
母と再会して二日目。
この日は母と二人で日光に観光旅行にいく予定だった。
でも僕のミスで、この日に心療内科の診察の予約を入れてしまっていたので、午前10:00、病院まで向かう。
診察室の中で、ドクターに「母に怒ってしまうこと」を話した。
すると、「昔のトラウマがあるから、母親と会うことで感情が自動的に、そのときの感情とリンクしてしまうんでしょうね」と説明をしてくれた。
あぁ、よかった。
「そうだろうな」と自分でも思っていたけど、実際にドクターにいわれると説得力がある。「自分が悪いんじゃないか」と自分を責めずにすんで、スッキリした気持ちになった。
間違えてこの日に予約をとってしまったけど、間違えてよかったと思った。
ということで、今日以降は神経を鈍らせる頓服薬を毎日のんで、この怒りをやり過ごすという作戦をたてた。
今回の旅行の目的は、僕が楽しむためではなく、母に楽しんでもらうことだからだ。
日光東照宮で介助者になる
そして母と二人、電車で日光へ向かった。
母は、広島の自宅では、いつも家の中でテレビを観てばかりで外出や旅行をしないので、「東武日光駅」の駅前にあるたくさんのお土産屋さんや観光客の姿に「旅行気分」を感じて、すでに楽しそうだった。
駅を降りてバスに乗り日光東照宮に向かう。
一つの敷地内に見どころのある場所が四カ所散りばめられていた。
そしてここは階段がたくさんあるし、手すりのない階段もあるので、僕が介助者になって母の手を取り、一段一段、階段を一緒にのぼったり、おりたりした。
「ここは私みたいなお年寄りはいないね」と母がいう。
周りを見渡すと、確かにいなかった。母にいわれないと気付かなかった。
ちなみに「日光東照宮」はどうだったと聞くと、「まあまあ面白かったよ、でも歴史好きな人のほうが楽しめるね」ということだった。
僕も母も、東照宮よりも、外国人観光客だらけの観光地らしい雰囲気を、楽しんだ。
鬼怒川温泉の宿のスタッフさんに大爆笑する母
ホテルは鬼怒川温泉エリアにとっていた。
日光のホテルはどこも高かったからだ。でも、このホテルも2名で1万円と、僕にしてはけっこう奮発したつもりだ。
宿に向かうために、「鬼怒川温泉駅」で電車をおりた。
駅の構内で、外国人夫婦の子供であろう1歳くらいの子が、別の日本人観光客の子供と遊んでいた。
母は立ちどまり「かわいいねぇ」と、その光景を笑顔で眺めていた。
そして再び歩き始め、今夜のホテルについた。
このときに出会ったフロントのスタッフさんが、かなりユニークな人だった。
ダジャレがどんどん口から滑り落ちてくる。
僕は頭の回転が遅いし、ダジャレに対して「あぁ」とか「へぇ」とかしか言えない人間なので、ただ話を聞いていたんだけど、隣にいる母は大爆笑していた。
ダジャレをいうたびに、大爆笑で大うけするので、ダジャレをいっているフロントのスタッフさん自身も驚いていた。
「本当にそんなに面白かったの?」とあとで聞くと、「だって、面白いじゃん!あんなこといわれたら!」と返ってきた。幸せそうな表情をしている。
いろんな人間がいるものだ。
イタリア人観光客の部屋に母とあがりこむ
そして部屋に入り、一階にある大浴場に母と向かった。
大浴場の中には外国の方が一人いた。
僕が身体を洗い、湯船につかるときに目が合ったので、お互いに挨拶をして会話を始めた。
イタリアから奥さんと子供の三人で、日本に一か月ほど旅行に来ているようだった。すごくフレンドリーな人だったので、僕は話すのに夢中だった。
そして、「Facebookか何か交換しよう!」ということになった。
でも、僕は大浴場にスマホを持ってきてなかったので「部屋の番号を教えてもらえる?」と聞くと、まさかの隣部屋だということがわかった!
そういえば、隣の部屋の前にベビーカーが置いてあった…。
「あのとき、鬼怒川温泉駅で母が見ていた子供のお父さんだ!」と気付いたので、「実は僕の母が、あなたの赤ちゃんを見るのが好きみたいなので、母と一緒にいっていい?」と聞くと、「もちろん!」と返ってきた。
そして温泉をあがり、母と隣の部屋にいくと、奥さんも旦那さんも、笑顔で迎え入れてくれた。
母は英語が話せないし、母にとってはじめての国際交流なので、僕が通訳をする。
どうやら奥さんは前に日本に友達と来たことがあるらしくて、今回旦那さんを連れてもう一度、日本にやってきたそうだ。
旦那さんははじめての来日で、興奮しながら「今回の旅でいった広島・宮島・大阪・京都・東京・高山」の話をしてくれた。子供のころは、日本の漫画を見ながら育ったらしく「北斗の拳」や「DEATH NOTE」も見ていたようだ。
そして明日は日光にいくらしい。
一通り話をしたあとは、母は子供に夢中で、ずっと子供と遊んでいた。
旦那さんの方は嬉しそうにたくさん話してくれるけど、奥さんの顔に疲れが見えるので、しばらくして僕たちも部屋に戻った。
部屋に戻ると母は「赤ちゃん可愛かったねぇ!」「イタリアの人と話せて楽しかったねぇ!」と大満足の様子だった。
僕も大満足だった。
気軽にコメントしてね!