はじめて今のパートナーと連絡を交わしたときは緊張して、動悸を抑える薬を飲むほどでした。
まず僕たちはゲイなので、「職場で」「英会話教室で」「国際交流会で」出会うチャンスは、ほぼ0%でした。というのも、ほとんど全ての人がゲイであることを隠して生活しているので、自然な流れで付き合いが始まることは難しいからです。
なので、「マッチングアプリ」を使います。
いまのパートナーに出会うまでも、アプリを使って出会いを探していましたが、なかなかいい人に出会えませんでした。「僕はゲイです。彼氏募集中です」と書かれたシャツをつくって、商店街を歩き回ろうかと思うほどに出会いに飢えていました。
そんなある日、「ピコーン」とスマホが鳴きました。
Somar という人から「Hi how are you?」とメッセージが届いていました。その通知を見たときに「外国人かぁ、いままで接したことがないから緊張するなぁ…。英語もほとんど話せないし。まぁ、でも英語が話せないからパートナーとしては無理だろうけど、友達になれたらいいかな!」ということで、緊張しながら返信しました。
高校で習った英語を思いだしながら、やりとりを続けていると「今度、会わない?」と連絡がきました。緊張しながらも「うん、いいよ」と返信をしました。
そして、会う当日。僕は逃げ出しました。
「ちょっと風邪をひいてしまって、また治ったら連絡するね」とメッセージを送りました。緊張して緊張して、ドタキャンしてしまいました。それでも、「この間の登山(僕の趣味です)で疲れが残ってるんだね。大丈夫だよ。身体に気を付けてね。またね!」と返信をくれました。
ジワ―っとした気持ちでその返信を読みました。悪いことしたな…。そして、「よし、次は会うぞ!」と決めました。
そして、二度目の当日。
彼は大学院で働いているらしいので、会うのは19時からということでした。そして、彼の家に直接向かいます。
(メッセージで待ち合わせ場所を決めるときに、僕が「最初はどこかのお店で会わない?」「いきなり家に行くのはちょっと気が進まない」と伝えると、「ははは、大丈夫。僕は無害だよ」と返ってきました。おそらく、まだ来日したばかりで外出が怖いのと、お金がないので家にしたようでした。)
そしてその日、僕は仕事が休みの日でした。
朝から約束の19時まで、10時間以上あります。「ものすごい緊張を抱えながら、この時間をどう乗り切るか」それが、この日のテーマになりました。
実は、この日の一週間前から、かかりつけの心療内科に行って「動悸を抑える薬」をもらっていました。Somar から来る英語のメッセージを見るだけで、いままでの日本語・日本人オンリーで生きて生きた世界観が崩れるため、あり得ないくらい緊張していました。Somar と会うことが決まってからも、外国人とちゃんと接したことがない僕は、緊張しっぱなしでした。
そして、この日は「動悸を抑える薬を飲んでも」収まらず、「アパートのベランダにイスを置いて、外の空気を吸いながら白湯を、何杯も飲んだり」、緊張を紛らわすために「自転車で何時間も外を走り回っていました」。
そして、その瞬間が来ました。
小さなアパートのドアのブザーを鳴らしました。
中でガサゴソ音がします。僕は胸がドキドキです。開いたドアから、笑顔で「どうぞ、どうぞ!」とウェルカムしてくれるSomarが見えました。
小さな部屋に案内してくれました。部屋は狭いけど、物がスッキリと収納されていて、綺麗なお部屋でした。
ベッドに横並びに座り、お互いに自己紹介のようなものから会話を始めました。第一印象は「とっても愛らしい人」でした。(言い方は悪いけど)小さくて古びたアパートの中にある、ほわーんと心がリラックスできる「オアシス」のような一室でした。
会話をしていたけど、僕の英語力は酷かったので、シーンとした時間がたびたび流れます。それで、ますます緊張してしまったので、せっかく作ってくれたフィリピン料理の味があまり分かりませんでした。
手持ちぶさただったので「部屋のなかを見てもいい?」とソーマに聞くと「いいよ」と返ってきました。僕は立ち上がって、本棚の中の本や、ベッドの下、冷蔵庫の中に、トイレの中など、いろんな場所を見ては感想を述べました。
それを見たSomarは「この人、大丈夫か?」と思ったようです。
そしてたくさん話して、この日はお別れしました。
最後まで緊張しっぱなしで、Somarに対する自分の気持ちもよくわかりませんでした。ただ、なんとなく「また、会いたいな」と思ったので、「また会おう!」と約束をして別れました。
そして、お互いの家に何度も行くようになり、自然と付き合うことになりました。
気軽にコメントしてね!