取り柄が欲しかった
僕は35歳です。
突然ですが、僕はこの間「テアラロア」というロングトレイルを歩いてきました。ニュージーランド南島の山々を1300km歩いて縦断しました。
ちなみに、32歳ころまで、自分には特技やこれといった趣味がありませんでした。
そして、僕は「何者」でもなかったし、自分の人生をふりかえったときにスカスカした感触のない自分に、虚しさを感じていました。そして焦りと同時に、諦めを抱いていました。
諦めといっても、完全に諦められるわけはありませんでした。
自分が「なにか」になれる、近道のようなものや、ゴールのような地点まで僕を飛ばしてくれるダイナマイトのようなものを探して焦っていました。
ある日、通っていた心療内科の先生に相談しました。
なにを相談したかは忘れたのですが、先生は「一日一日を全力で踊ることです。そんな日々をひとつひとつ積み重ねていけば、振り返ったときに、いつの間にかこんなところまで来ていたと、驚くものなんですよ」と僕にいいました。
テアラロアを歩き終えるまで
そしてそのあと、僕は「登山」という趣味を見つけました。
僕は登山が大好きになりました。一生手放したくない、大事な趣味でした。
そこで、その先生がいった言葉のとおり、コツコツと山に登り続けました。いままでの「無」のような30年間を取り返すように、山に登っている時間を噛みしめました。一歩一歩、大切に山を歩きました。
最初は、簡単で短いコースでも、大変でした。
でも僕は「仕事以外の余った時間をすべて登山に注ぎ込もうと」登山のことだけを大事に考え、すこしでも上達するように、毎回毎回、いろんなことを考えながら、大事に登りました。
毎週登っていました。
「ひとつずつ」や「一歩ずつ」をやっていると、「ときどきこれでいいのだろうか」と迷う気持ちも生まれます。だけど、そのたびに僕は過去の自分をひきあいにだして、自分の成長を確かめていました。それがたとえ1㎜程度の成長であってもです。
そうやって山に登ることを繰り返していると、どんどん難しい山や体力が必要な山にも登れるようになりました。
そして、自分への挑戦として「はじめてのテント泊」を決行しました。

やる前まではドキドキしてたまらなかったし、夜に山の中で眠ることも怖かったです。
でも、やりきりました。
そしてこの体験のおかげで、小さな自信が一つ増えました。
そしてそんな風にして、いわゆる「小さな成功体験をつみあげ」てゆきながら、少しずつ難易度もあげていきました。
はじめてテント泊をしたあとに、もう3回ほどテント泊をしました。
そしてそのあとに、もう一段階レベルを引き上げて、3泊4日の山旅を決行しました。

新しい挑戦をするたびに、毎回ものすごくドキドキして不安になります。でも、その挑戦が達成できたあとは、次の新しい景色が見られます。
登山を始めたばかりのころには「3泊4日で山旅をするぞ」なんて発想すら浮かびませんが、一つずつ経験をつみあげて、1泊2日のテント泊をしたあとになら、そんな発想が浮かびます。
そうやって、一つずつ経験をつみあげていきました。
その次は、「はじめての雪山登山」をし、そして「はじめての雪山テント泊」をしました。
ものすごく長い距離を歩く挑戦もしました。


そして、その次に見えた景色は「6泊7日のロングトレイル」でした。

本当は11泊12日のロングトレイルをする計画でしたが、さみしくてたまらなくて6泊7日でリタイアしてしまいました。
このときはすでに、「ニュージーランド縦断」を挑戦すると決めていたので、できなかった自分に自信を失いました。
なのでニュージーランドに出発する前に、別の「6泊7日ロングトレイル」に挑戦し、無事達成しました。

この挑戦のおかげで、自信をもってニュージーランドに行くことができました。
そして、ニュージーランドのロングトレイルを歩き切ることができました。

そして歩き切って日本に帰ったとき、心療内科の先生がいっていた言葉を思い出しました。
「いつの間にかこんなところまで来ていた」と。
一歩一歩のつみかさねは最強の手段
テアラロアを歩くまで、いろんな小さな挑戦があったことを紹介しました。
その内のどれかを抜き取ってしまったら、テアラロアは歩けていなかったと思います。
イチローさんも「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道」といっていました。
「自分にできる範囲で最大限の挑戦」が自分を引き上げ、新たな世界を覗かせてくれます。そして、そんな挑戦を続けた先に、自分でも想像できなかった景色があるんです。
本当です。

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