【テアラロア Day41】なぜここにベリーが

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筋肉がバキバキ

真夜中に身体の痛みで目が覚めた。

身体の、特に両脚の筋肉がバキバキに凝っていて、少し脚を動かすとつりそうになる。

原因はすぐに思い当たった。

地面がフラットではないからだ。フラットではないときは時々あるけど、今回は身体の右側が高くて、左側が低い。

いつもは、フラットじゃなくても、頭側が高くて、足側が低いようにテントをたてている。

でも、身体の左右で高低差があると、寝ている間もずっと、身体は姿勢を維持するために頑張らなければならない。

なので、左側の低いところに、服をたくさん敷き詰めフラットにし、少し脚のストレッチをしたあと、また眠ることができた。

憂鬱な朝

朝、目が覚めると、支度を始める。

この山域に入って、この状況におちいって何度目の朝だろう。崩れ落ちそうな身体をメンタルで維持しながら、一日一日をつないでいる。

朝に思うのは「今日、歩けるのだろうか」「いや、歩かないと本当に危機的な状況におちいる。歩くしかない」だ。気を張ることしか考えていない。

本当は毎朝、出発する前に憂鬱な気持ちになっていたけど、それに甘えることはできないので、歩くしかない。

予定では、今日でこの山域を抜けられる。食料は今日と明日の分まである。

この山を降りて、ロードにたったらヒッチハイクをして「メスベン」というここから60kmほど離れた街に行く計画だった。

ただ、情報によると、この道路はめったに車が通らないらしい。なので、最悪のケースを考えて、今日と明日の二日間で60kmのロードを歩きメスベンまで行く計画だった。

そして、歩いている途中に車が通ったら、親指を立てる。それを繰り返そうと思っていた。

そう思いながら、痛みや不安をメンタルで支配しながら山を降りていた。

まさかの登場

そして、山の終わりが見えたころ、前方の茂みから声が聞こえた。

「ヨー!ヨー!」

えっ?

聞き馴染みのある声だ。クイーンズタウンからアロータウンに歩いていたときに、後方から聞こえた声だ。スリー・コース・ディナーを食べた翌朝、出発したあとに後方から聞こえた声だ。

一緒に歩こうと合わせているわけではないんだけど、いつもバッタリ遭遇する。この「ヨー!ヨー!」という声と共に…!

ベリーだ!

茂みから、ヒョイっとベリーが姿をあらわした。

出す言葉がわからなくて、代わりに大きな声が出た。

なんでここにいるの!?どうなっているの!?三日ほど前にいるはずじゃ!?何が起こっているの!?なんで!?うれしい!!!

そのあとは、一緒に歩きながら「どうなっているのか」を聞き出した。

二日前にメスベンに着いたベリーは、街に着いた初日も僕のことが心配だったらしい。というのも、ケイロブやヤンから僕の体調が悪いことを聞いていたからだ。

何が心配だったかというと、一日に少ししか歩けないので、食料が山のど真ん中で尽きるんじゃないかということだ。

そしてメスベンの二日目の夜も、僕が心配になり、夜中の2時に目が覚めて眠れなかったらしい。

そのまま、60km離れた山に探しに行こうにも真夜中だから何もできない。だからベリーは朝まで待って、街行く人に声をかけた。

「車を一日、借りられないか?」と。

そして、交渉をして一日16000円で車を貸してもらい、今朝、山の麓まで運転してきて、僕を探すためにそこから山を登ってきたということだった。

「ありがとう&ごめんなさい」と伝えると「You are very welcome!!」と返ってきた。そんな気持ちで心がいっぱいになりながら、二人で下山した。

そしてベリーの運転で、メスベンまでの道を行く。

めちゃくちゃ楽だ。

歩かなくても、スイスイ進む。

でこぼこの砂利道に車がガタガタ揺れる。身体が浮いているように感じた。天国だった。

そして、メスベンまでの60kmの道ですれ違った車はたったの二台だけだった。本当に車の通りがないので、ヒッチハイクはかなり難しかったと思う。

よかった…。

メスベンの街に着くと、ベリーがガソリンスタンドによってガソリンを入れる。そして指定された場所に車をとめ、忘れ物はないか二人で確認したあと、鍵をサンバイザーの裏に入れ、ドアをロックした状態で閉める。

そして街を歩いた。

再集結

ブルーパブというレストランに立ち寄った。僕はテラス席に座り、ベリーが二人の飲み物を買いに店内に入る。

席に座って待っていると、ドイツ人のマヌーがやってきた!

マヌー!

ちょうど店内でランチを注文してきたところらしい。そして飲み物を持ったベリーが合流する。マヌーが「もうこの街には誰もいないのかと思ってた!」といい、「僕も、もう誰にも会えないと思っていたら、ベリーが迎えに来てくれた!」と伝える。

三人で話していると、そこにサムとケイロブもやってきた!

サムは、ここから先は歩いたことがあるので、ここがテアラロアのゴールらしい。ケイロブは足の状態がひどいのでしばらくメスベンで休むということらしかった。

僕の予想に反して、また多くの人と合流することができた。

そしてそのあとは、みんなそれぞれの宿に戻る。

僕は久しぶりに一人部屋のホテルをとった。ベリーと同じホテルなので、一緒に向かった。

快適すぎて、時間があっという間に流れてゆく。夕方になると、ベリーからメッセージがあり、一緒に街に出かけた。アイリッシュパブで晩ごはんとアイリッシュビールを飲む。

ニュージーランドに来てから、一番美味しいご飯だった。

ベリーが「テアラロアを歩いて自分が変わりつつある」と言っていた。僕が「どんなふうに?」と聞くと、ニヤリと笑って首を横に振る。その反応を見て「あぁ、言葉にしてしまったら、消えてしまうかもしれないんだね」というと、微かにうなずいた。

そして「テアラロアが終わったら、言えると思う」といっていた。

店を出る。

実は、ベル&ドネックが車でメスベンまでちょうど来たところらしいので、二人とまた合流する。

どうやらベル&ドネックはここから少し先にある「アーサーズ・パス」というところからテアラロアを再開するようだ!

また四人で街を歩き、いろいろと話した。

ただ、ベル&ドネックは400kmも車で走ったあとで疲れているし、僕たちも山で疲れていたので、早々に切り上げて、明日に備えることにした。

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著者

栃木県在住の34歳。
34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越したばかり。仕事もやめて、無職になる。同性愛者・躁うつ病患者(現在は寛解している)。趣味は登山。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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