【テアラロア Day37】ニュージーランドの広大な大地の中で風邪をひく

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風邪をひく

昨日の夜は、夜中に喉が渇いて何度も目が覚めた。そして、身体が熱くて、服を脱いだ。

今朝、起きたときに気がついた。

あぁ、熱がある…。

身体がだるくて、寒気がする。クリーム色の鼻水も少し出る。

とにかく喉が渇いたので、痛い足で200mを5分かけて歩き、水をゲットする。

ものすごく心細かった。

こんな広大な自然のなかで風邪をひいた自分はどうしたらいいんだろう。近くに薬局があるわけでも、スーパーがあるわけでもない。弱気になっていたので、ローズとケイロブに聞いてみた。

「ロングトレイルで風邪をひいたとき、どんな気持ちだった?」と聞くと、二人ともトレイルで風邪をひいたことがないと返ってきた。

そしてローズが、ハチミツをくれた。

どうしたらいいかわからずに、とりあえずゆっくりと歩き始める。自然の中を歩いていれば、治るんじゃないかという期待があった。

そして、解熱剤を飲んでいたおかげか、そこまでしんどくはなかった。

ただ、このとき僕は三つの問題を抱えていた。

一つ目は風邪をひいたこと。そして二つ目は、皮膚が剥がれて赤い肉が表に出ている、足の裏の大きな水ぶくれのこと。そして最後に、ザックの腰ひもの部分に大きなしこりができていたことだ。

プクッと膨れた、そのシコリにザックの腰ひもを巻かないといけないんだけれど、かなりの激痛が走る。なので、腰ひもをあまり使わずに肩でザックを背負っていたので、肩が痛い。

いろんなところが痛すぎるし、倦怠感もあって、つらかった。

それでも歩いている理由は、また次も大きな川があって、今回は絶対に迂回しないといけないレベルだからだ。そしてベリーからのメッセージで「明後日の四時にシャトルバスが来る」とあった。

もし僕が健康なら、普通に歩いただけでも間に合う。ベリーにも会えるし、シャトルバスにも乗れる。

だから、頑張って歩いていた。

ヤンの優しさ

しばらく歩くと、昨日出会ったドイツ人のヤンが河原で休憩していた。

ヤンは一見硬派な人間に見えるけど、突然おちゃらけたりする、かなりユニークな人だ。そして優しい。

ヤンに風邪をひいたことと、水ぶくれのこと、腰の痛みのことを話すと、救急キットを広げてみせ「このなかで何か必要なものはない?」と助けてくれた。

ガーゼを二枚ほどもらう。

腰の痛みを減らすアドバイスをくれたり、水ぶくれができた原因の靴のサイズ感も見てくれた。

そして「他に何か僕にできることはない?」「このあと一緒に歩こうか?」と心配そうにいってくれた。

でも、いまの僕の歩くペースはかなりスローなので「ありがとう、でも僕はスローだから一人でいくよ」と伝えた。

そのあと、ヤンより先に河原を出発する。

追いついてきたヤンが僕の横に並び「最後に聞くけど、他に僕にできることはない?」といってくれたけど「大丈夫よ」と答えた。

そして「先にいくよ?」といわれ「うん、先に行って」とヤンを見送った。

ヤンの姿が小さくなっていく。

また一人になった。でも、そもそも、このテアラロアは僕の冒険だ。一人になったからって、やることは変わらない。一人でも最後まで歩くんだ。

でも、やっぱりさみしかった。

リタイア

そのあとは、やはり身体が苦しかったので、歩かなければいけない距離の半分ほどでリタイアして、川の近くにテントを張ることにした。

倦怠感で、テントを張るだけでも苦しくて、「早くテントを張り終えたい」と思いながらだった。

そして、中に入る。

ご飯を食べて、紅茶を飲んで、横になる。

目が霞んでいるような気がする。モンベルというテントのロゴをうっすらと見ながら、外で鳴いている鳥の声を聞いていると、いつの間にか眠っていた。

明日からどうしたらいいかわからない。とりあえず今日は休もう。

みんなとも、おそらくもう会えない。

明日以降のことを考えるのはやめて、とにかく休もう。

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著者

栃木県在住の34歳。
34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越したばかり。仕事もやめて、無職になる。同性愛者・躁うつ病患者(現在は寛解している)。趣味は登山。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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