今日もクイーン・シャーロット・トラックを歩く。
明日でゴールの予定だ。

ゴールがいよいよ間近に迫ってくると、その先にある日本での生活のことを考え始める。
悩みの多い日常生活。
過去に日本であった嫌なことは、今でも鮮明に覚えている。何度思い出しても、その嫌な感触は色褪せない。
そしてブルーな気持ちになる。

フィリピン人のパートナーや、外国の友人と外を歩いていると、ときどき怖い表情でこちらを見ている人がいる。
なにも悪いことはしていない。
ここニュージーランドに来て、たくさんの外国人(この場合は僕が外国人だけど)と接して思うのは、日本で培ってきた外国人に対する自分のイメージがいかに偏っていたか、ということだ。
そして、ニュージーランドという外に出ることで、はじめて自分が「日本人」なんだと気付けた。自分のアイデンティティである「日本」というものをはじめて強く意識するようになったし、日本への愛着も湧いてきた。
何が言いたいかというと、外に出ることで「外の世界」が知れるのはもちろん、日本という「内の世界」についても、今までよりもはるかに深く知ることができた。
だから、不思議な表現かもしれないけど、日本だけにずっといると、日本のことや「自分が日本人であること」がわかっているようでわからないような状態になるんだと思う。

話が脱線してしまった。
旅が終わるとまた、悩みだらけの世界に戻ることになる。
だけど、このテアラロアで学んだ「トレイル・プロバイズ精神(なんとかなる、きっとうまくいく)」を忘れずにいたい。

そして今日歩き始める前の時点で、残りの距離は25kmだった。

終わりを確信すると、身体中の力が一気に抜ける。だから、今日のほぼ平坦な20kmが、とてもキツく感じた。
景色も見ずに、ただ地面を見ながら歩き続けた。

そして、海沿いのキャンプ場に着いたので、テントを張る。

エミリーは途中にあるカフェでお茶をしながら、休んでいるらしい。きっと僕と同じで疲れがどっと出たんだろう。
テントの中でゴロゴロしていると、エミリーと、そしてパブロがやってきた。
暗くなってゆく景色の中で、お互いにここまで来れたことを祝い合う。そして、ベンチを三人で囲み、エミリーとパブロが話しているのを片耳で聞きながら、薄暗い海を眺めていた。

しばらくして、みんなそれぞれのテントに向かう。これがニュージーランドでの最後のテント泊だ。
時刻は22時。
そして残りの距離は5kmになった。
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