【テアラロア Day72】この旅の終わりが始まった

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昨日の宿の日本人

昨夜、寝る前に共用のキッチンへ水を汲みにいったら、二人の日本人がいた。

一人は22歳だといっていた。二人とも地元が近くて、「海外で働いてみるか!」と軽いノリで、一緒にニュージーランドへ来たらしい。

そして、二人ともこの街のレストランで調理の仕事をしているようだ。

二人ともそんなに英語が話せないけど、「英語が話せなくても、働けちゃうんですよ」といっていた。ホールではなくて、調理専門だかららしい。

「ニュージーランドはどうですか?」と聞くと、ニュージーランドは大好きと返ってきた。「人が優しいですよね」といっていて、同感だった。

一人が、晩ごはんのパスタを二人分つくっていて、「できあがったので」といって、二人とも居間のテーブルについて、パスタを食べ始めた。

さすがシェフ。パスタの美味しい匂いが届いて、お腹が空いてくる。

そのあと部屋に戻り、「海外で働いている日本人が、確かにいるんだなぁ」と少し感動し、眠った。

腰と膝の痛み

そして朝、目が覚めた。

腰が痛い。実は昨日の夜から腰が痛かったんだけど、眠ったらよくなるかなと期待していた。だけど、相変わらず痛いので、「残り100キロで、ギックリ腰によるリタイアは嫌だぞ」と思いながら、部屋でストレッチをした。

外に出る。

このテアラロア南島の最後のセクション「クイーン・シャーロット・トラック」の入り口に向かって歩き始めた。

小さなハブロックの街を見ながら、のんびり歩く。

いままでと違って、この街は港町だ。

そして歩いていると、潮の香りがする!

僕は海より山派だけど、久しぶりの潮の香りに気分があがる。

歩いていると、木の幹から水が流れ落ちる、不思議な滝があった。

そしてしばらく歩いていると、右膝に痛みを感じ始めた。腰も膝も、痛みを感じ始めたのは、終わりが近くて気が抜けたからなのかもしれない。

ただ、この膝の痛みはすぐにおさまった。

潮の香りや、身体の痛みが、この旅の終わりを語り始めていた。

コーラの一生

歩いているとガソリンスタンドを見つけた。日本のガソリンスタンドとは違い、中では食料が売られている。

コーラを手にレジに向かう。

そしてお店を出たあと、歩きながらプルタブをひく。「プシュ」と炭酸が暴れる音を聞き、幸せな気分になる。

トレイルで飲むコーラは絶品だ。

そして、コーラがなくなる。缶の底に残った、炭酸の抜けた、ただの砂糖水を何度も口に流し込もうとする瞬間は、いつも虚しい。

高校の先生

そして、クイーン・シャーロット・トラックの入り口で、一人のTAハイカーに出会った。

彼は地元のおじちゃんで、反対方向からテアラロアを歩いているということらしかった。

あまり笑顔を浮かべず、口数の少ない彼は、なんとなく「日本のおじちゃん」を思わせる。

僕が日本から来たと知ると、日本語をいくつか話してくれた。どうやら、富士山を登りにいっていたようだった。

そして彼が、「日本人に会ったと妹に見せたいんだ」といいながら「一緒に写真を撮ってもいいかな?」と聞いてきた。

「もちろん!」と答えると、彼がツーショット写真と、僕だけが写ったワンショット写真をとる。

そして「君がなにか話しているビデオも撮っていいかな?」といわれたので、「もちろん、いいですよ!」と答えた。

そしておじちゃんが合図をして、僕の録画撮影が始まった。

「ハロー!日本から来ました。テアラロアを歩いています。だけど、全部を歩くわけではなくて、南島だけを歩きます。南島だけでも十分な経験でした。なぜかというと、景色がとっても綺麗だからです!とても満足しています。では、バーイ!」

と、英語で元気よく話した。

そのあとおじちゃんが「実は高校で働いているんだけど、この動画を授業のなかで生徒たちに見せてもいいかな?なにか彼らに、勇気を与えたいんだ」と僕に伝え、「もちろんです!」と返した。

そして「お互いにいい旅を!」と、別れる。

あの動画が、高校の授業で流れるんだな。不思議な気持ちだった。

エミリーと合流

そしてクイーン・シャーロット・トラックに入った。

ベリーと出会った当初、テアラロアの最後「クイーン・シャーロット・トラック」は一緒に歩こうと、約束していた場所だ。

ここに来るまで、お互いにいろんなことがあった。そして今は、一人でこの場所を歩いている。

ちなみにベリーは、もうテアラロアをゴールしている。彼は、僕と同じで、3月1日にフライトを予定していたけれど、予定を変更して2月23日にオーストラリアへ帰ることになった。

そうメッセージがあった。彼女とのデートが楽しかったんだろう。

結局、ベリーがバンで助けに来てくれた、その翌日、メスベンの街で別れた日が、最後に彼と会った日になった。

なんとなく「また会える」と信じていたけど、そうではなかった。

現実の切なさを知った。

そして、海沿いのキャンプ場についた。

このクイーン・シャーロット・トラックはグレート・トレイルといって、通行許可証を買わないと歩けない。

そしてキャンプも指定のキャンプ場じゃないとできない。なので、今夜はこのキャンプ場に一緒に泊まろうとエミリーと約束していた。

海を眺めながら、紅茶を沸かし、彼女を待つ。

一時間後、エミリーがやってきた。

昨日の宿、僕は個室に泊まったけど、彼女は相部屋だった。そして同じ部屋の人が夜の一時までずっと自分のことばかり話し続けていたので、寝るのが遅くなったらしい。

そして今朝、彼女がカフェで朝食をとっていると、またその人がやってきて、一方的なお喋りがが始まったようだ。エミリーは「そろそろ、行かないと」と切り上げたようだ。

だから出発が遅くなったということだった。

二人でいろいろと話したあと、テントに戻る。

海沿いのキャンプ場だ。

いままで、川の横や、滝の横、大雨の中など、いろんな水の音を聞いてきたけど、今日は海の波音だ。

贅沢な夜だ。

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著者

栃木県在住の34歳。
34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越したばかり。仕事もやめて、無職になる。同性愛者・躁うつ病患者(現在は寛解している)。趣味は登山。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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