【テアラロア Day58】過去をひきつれて今と一緒に歩く

もくじ

精神統一

今日で58日目だ。

終わりが近くなってから、毎日残りの距離を数えている。テアラロアのゴールまで、あと345kmだ。

今日も昨日と変わらない。

淡々と道を歩く。

なにも考えない。

なにも考えずに、目の前の地面の一点だけをじーっと見ながら、ひたすら歩く。

すると、過去の記憶が自動的に蘇ってくる。

蘇ってくるのは、何度も思い出したことのある記憶がほとんどだけど、中には「あぁ、こんなことがあったなぁ」と少し驚くような、今まで思い出してこなかった記憶も、ときどき蘇る。

そして、豊かな気持ちになれる。

まるで記憶を失った人間が、過去の記憶を少しずつ思い出し始めて、そのたびに自分の人生のピースが一つずつ埋まってゆくような充実感だ。

余談になるけど僕は、ストレスから、過去の記憶がごっそりと抜けている期間があるし、記憶の順番がめちゃくちゃになっている期間もある。

過去というのは、焚き火の燃えかすのように終わったものではなく、自分が途切れることなく存在し続けてきたと証明し、支えてくれる、大事な自分の一部だ。

だから、自分にもちゃんと過去があったと思えると嬉しくなる。

ここにきて、また牛!?

しばらく歩いていると、トレイルのすぐ横に大きな黒い身体が見えた。

横になって休んでいる牛に見える。

またか…!!

でも、一頭だけだし、なんとかなるだろうけど、旅も終盤に入り、身体も気持ちも疲れていたので、もうどうでもいいやと思っていた。

ここでタックルをくらい「残り340kmでリタイヤかもなぁ」とぼけーっと考えながら歩いていると、牛がこちらに気付き顔をあげた。

あら!

可愛い顔だと思ったら、まさかの馬だった!

お馬さんがここにいる!!

トレイル上では牛や羊を、いままでたくさん見てきたし、たまに鹿がいることもあった。ときどき猫が目の前を歩くこともあったし、街に近いところではウサギが野原をピョンピョン跳ねていた。

でも、まさか、トレイル上に馬がいるとは思ってもみなかった。

ちょっと嬉しくなり、写真撮影をする。そのあとはあまりストレスをかけないように、すぐに立ち去った。

テント場選び

テアラロアにはハットという山小屋が用意されていて、その中に泊まることもできるし、その横にテントを張るスペースも用意されている。

でもハットまで行かなくても、禁止された場所以外なら、たいていどんな場所にでもテントを張ってもいい。

僕は、一人で静かな場所にいたいので、いつも、誰もいなくて、快適なテント場を探している。

そして今日は、かなりいい場所を見つけたので、そこにテントを張った。

まず、いいテント場の条件として、外せないのが、近くに水場があるということだ。なので僕は、いつも川の近くにテントを張っている。飲み水はもちろん、身体をしっかり洗えるからだ。そして夜、眠るときになると、川のせせらぎがヒーリングミュージックになり、安眠できる。

次に大事なのが、トレイルから少し外れた人目につかない場所を選ぶことだ。別に人目についてもいいんだけど、テントの中でリラックスしているときに、近くにハイカーが歩いていたり、話し声が聞こえると落ち着かなくなる。

そして同じくらい大事なのが、日陰を選ぶことだ。

ニュージーランドの日は長い。日なたにテントを張ると、中は灼熱地獄になる。

どうしても日陰が見つからない場合は、近くの川で身体と髪を濡らして、服もビショビショに濡らす。そしてその服をテントの中で着たまま過ごす。すると、だいぶ快適に過ごせる。

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著者

栃木県在住の34歳。
34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越したばかり。仕事もやめて、無職になる。同性愛者・躁うつ病患者(現在は寛解している)。趣味は登山。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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