【テアラロア Day55】小さな助けをたくさん借りながら

もくじ

テントで縮こまりながら妄想をする

一人で歩き始めて5日目だ。

毎日、テントの中では、日本に帰ったあとのことを想像しながら過ごしている。

日本に帰って、快適な家で思う存分お風呂に入り、スーパーにいって食べたかったものをたくさん買い、いろんな種類のお酒も飲む。もちろんパートナーと一緒に。

そして地元愛媛に帰り、友人たちと会い、日本の安くて美味しいご飯屋さんで、気を張らずにのんびりしながら話す。

そして「テアラロアは途中、苦しかったけど、なんとかなったね。ははは」と言いながら、清潔な身体と清潔でおしゃれな服に包まれながら、リラックスしている。

なんて想像していると、本当にテアラロアを完歩して日本に帰ったような気分になるけど、目の前を見てみると、やっぱりここはテントのなか。そして、目の前の410kmが僕を待っている。

いろんな助けを借りながら

歩き始める。

あんまり意識しないようにしていたけど、「テアラロア疲れたなぁ!」という気持ちが、だんだん心に広がり始めていた。

テアラロアを始めた最初の頃は、期待と興奮で、毎日生き生きして、いろんな人に話しかけていたけど、あのときの自分がはるか遠い過去の自分に感じる。

今日も山と山の間を歩く。

道のほとんどが森のなかを通っている。

途中で川を見つけた。ザックを下ろして、川で髪をジャバジャバ洗う。冷たい水が毛根に染み渡って気持ちいい!

実は頭を掻くと、ものすごい量のフケが舞い落ちるので、今日から髪を洗うことにした。そのあとも、川を見つけるたびに髪を洗い続けた。

しばらく歩いていると、ハチに刺された。足首に鋭い痛みが走る。小さなハチだったので、あまり気にせずに歩き続けたけど、そのあとも鋭い痛みは続いた。

一応、毒を吸い出してみる

だけど、この鋭い痛みが僕の疲れていた心を目覚めさせてくれた。

そしてしばらく歩くと、反対方向から男女二人組が現れた。

挨拶をして、立ち話をする。いろいろ話していると、どうやらベル&ドネックと同じオランダから来た二人だということがわかった!

「オランダ人の友達が二人いるんですよ!ベルとドネックっていうんですけど、会いませんでしたか?」と聞くと「うーん、会ってないねぇ」と返ってきた。

そして、僕が日本から来たことを伝えると、「おぉ、日本!ついこの間、日本に3週間、旅行してきたよ!」と伝えてくれた!

北海道や東京、日光に長崎…いろんな場所を電車でまわったらしい。

そして「日本に恋してしまったよ!また行きたい!人も優しいし、食べ物も美味しいし…!ところで、日本食が恋しくならない?」と言われ「めっちゃくちゃ恋しいです!いつも日本食を頭に浮かべながらトレイルを歩いています!」と日本食へのあふれる情熱を、ミュージカルのように全身で表すと、笑ってくれた。

そして、お互いに「会えてよかった、トレイル楽しんでね!」と言い、別れた。

また黙々と歩いていると、前から一人やってきた。

彼女はフランスからやってきたようだ。立ち話をしたあと「食べ物足りてる?」と聞かれ、とっさに「大丈夫ですよ」と答えた。

すると、彼女は自分のザックに手を伸ばし「食べ物はたくさんあるから、これあげるよ!」と食べ物をくれた!

「実は、食べ物がちょっと足りてなかったんですよね…」というと「だと思った!」と返ってきた。

とてつもなく有り難かった。僕の表情を見ただけで、食べ物が足りてないとわかったのだろうか。とにかく、有り難かったので「Thank you sooo much!!!」と言って別れた。

そして、ハットの近くにテントを張った。

仲間がいなくて、ずっと一人で歩いているけど、今日は川とハチ、そしてオランダ人二人組、フランス人に助けてもらった。

そのおかげで、55日目も無事終えることができた。

気張るのをやめよう

ちなみにニュージーランドに来てから、なんとなくいつも気を張っていた。そして、日本にいるときよりも少し、ハッキリとした態度で話すようにしていた。

それは、海外だったらハッキリしたほうがいいだろうという偏見が混じっていたからだ。

でも、実際には「おっとり系」や「癒し系」、「シャイ」や「和み系」などの自分と近い人もそれなりにいる。

僕はいままで、なぜこんなに、自分に変なプレッシャーをかけていたんだろうと急に気が付いた。

僕も、いつも通り、穏やかな感じの自然体でいればいいじゃないかと思い、気張る心を緩めると、一人で歩くときの精神的なしんどさがどんどん抜けていった。

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著者

栃木県在住の34歳。
34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越したばかり。仕事もやめて、無職になる。同性愛者・躁うつ病患者(現在は寛解している)。趣味は登山。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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