山に登って、なにが楽しいの?
昔の僕が思っていたことです。その答えは山の外側にはありません。実際に、山を繰り返し登ることで、登山の魅力がわかってきました。この記事では、僕の経験に基づいた100%オリジナルな表現で、登山の魅力を語っていきます。
登山の魅力 10選
無に近づける
登山でやることはただ一つ、歩くことです。
コンクリートの上を歩く時とは違って、山では「歩くこと」に全力集中します。
様々な大きさの石、太い木の根っこで凸凹になった地面の上を、足をくじかないように、転ばないように慎重に歩きます。
蛇や虫、そのほかにも危険がないか常に注意を払いながら歩きます。そんなふうに全力で集中して、ただただ山道を歩き続ける。
その間ずっと黙々と、歩くことに集中します。そして、フッと顔を上げた瞬間、心が氷のようにスッキリしていることに気付くときがあります。これは「過去や未来の不安や心配事を考えずに、今に集中する」という、一種の瞑想です。
フッと顔を上げたとき、心はクリアで澄んでいます。そして、そんなときに自分の素直な気持ちに辿り着けるのです。
「あの人に謝りたいな」「あの時の僕は、こんなところが悪かったな」と素直に認められます。そして、謝ろうとする気持ちに一切の抵抗がなくなります。
おそらく街での生活では、「プライドなどのノイズ」や、単純に「忙しい」「モノや人が周りにあふれて自分にうまく集中できない」といったことが、素直な自分の気持ちを覆い隠しているのだと思います。
心の景色が見える
登山の魅力は山頂からの絶景でしょう。
ですが、それだけではありません。登山という長い時間を使った一日の旅のなかで見える、自分の感情や、その移り変わり、自分の「心の景色」を眺める、心の旅でもあります。
日常生活を惰性で生きている時間とは明らかに違った、「心が動いている」感触を得られるはずです。
疲れ方が気持ちいい
登山をやる前は、サイクリングが趣味でした。
あるとき、サイクリングでヘトヘトになった後と登山でヘトヘトになった後の、疲れ方の違いに気が付きました。
まだ体力がなくて身体が弱った頃のことでした。
サイクリングで疲れた後は、身体が風邪をひきそうになるような怠さがあったのに対して、登山の後ではそれがありませんでした。
大自然の中を歩く登山では、森林がつくりだす新鮮な空気に、身体の外側から肺の中まで満たされます。目には見えない自然のパワーが働いているのだと思います。
山と街の両者を味わい、両者の良さを再確認できるため、必然的に人生が豊かになる
山に入ると、気持ちがいいです。
「こんな気持ちのいい大自然で身体を動かせるなんて、最高に贅沢だなぁ!」と思います。
ですが同時に、長い間山にいることで、その過酷さや不便さを実感し始めます。そして「街に戻りたいなぁ。家に帰ってお風呂に入り、冷房の効いた部屋でビールでも飲みながら、美味しいご飯を食べたいなぁ」と思うようになります。
逆に、長い間街にいると、今度は山が恋しくなります。「人間関係に疲れたなぁ」「仕事のストレスがたまっていて、しんどいなぁ」「静かな場所に行きたいなぁ…」
そんな風に、「山の良さ」「街の良さ」にハッキリと気がつくようになります。
今までは惰性で生活をし、当たり前に受けとっていた「街の生活」や「家の生活」の快適さに気付きます。そして「自分は、なんて恵まれた、よい時代に生まれたんだろう」と気付き、特別なものを求めなくなります。
街の生活に疲れたら、山にリフレッシュに行けます。
原始時代は、山一択の生活でとても厳しい時代だったと思います。ですが、現在は移動の自由が認められ、車や原付などの交通手段もあり、インフラが整っています。「街に疲れたら山」「山に疲れたら街」と簡単にシフトすることができる、とんでもなく恵まれた時代です。
「美味しいご飯が食べられる」「冬には暖かい鍋が食べられる。夏は冷たい料理や、アイスが食べられる」「いつでもお風呂に入れる」「シャンプーや石鹸で、いつでも清潔な状態でいられる」「気兼ねなくトイレに行ける」「冷房や暖房がある」「心地のよい布団で眠れる」「安心を保証してくれる家がある」「必要なものはすぐに買いに行ける」「簡単に友人に会える」
特別なことがなくても、この当たり前のことがどれだけ有難いか実感できたら、毎日を幸せに過ごすことができます。
ハードな登山で、とてつもない充実感を感じられる
登山の間は、全力で集中しています。
そして厳しい山を登る日は、それを八時間以上も続けたりします。
無事下山したあと「今日は間違いなく悔いのない一日を過ごした!」「これ以上はない程、全力で生きた日だった!」と、とてつもない充実感に包まれます。
なにが正解なのか、時々わからなくなる人生の中で、歩みを積み重ねた「この日」は確かなものとして、今日一日に刻まれます。
「少なくとも、僕は進んでいたんだ」という安心感が心を支え、次への一歩を応援してくれます。
アレンジされていない自然を歩くときのアドベンチャー心は、街では絶対に味わえない
街の景色や道は、人によってアレンジされています。
意図をもってアレンジされています。だからこそ、目的地に最短で、快適にたどり着けます。なにか目的を果たすには、街は最良の世界です。
一方、山には、そんなものはありません。
有名な山の登山道はものすごく整備されているので、やや例外ですが、それでも自然の強さに従うようにして登山道のルートはとられています。
街に住み、意図されたその環境にすっかりフィットしている人からすれば、山で歩く道は「無駄」だらけです。その無駄にいちいち振り回されながら、山頂を目指すことになります。
そして、山の地形や環境は人が意図して作ったものでないからこそ、この道の先がどうなるか計算できないのです。
そんなふうに、「無駄を受け入れる」「先が計算できない」という感覚をもって、ドキドキしながら進む登山はまぎれもないアドベンチャーです。
いろんな物事を知って、どこか褪さめてしまった大人にも、未知に心踊らせ、童心に戻れる世界がすぐそこに存在するのです。
安全が保障されていない山の中に自分がいま立っているという「ライブ感」
大自然を舞台にしたようなサバイバル映画を観ていると、自分があたかもその場にいるかのような心境になるときがあります。
その映画を見終わったあと、僕の心は映画の世界から僕の身体に戻ってきます。それだけ、ドキドキハラハラを味わったということです。そのとき、心はその世界にいましたが、身体はずっとテレビ画面の前にいました。
ですが実際に山に登ると、身体も心も、大自然のフィールドにポツンと置かれるわけです。何が起こるかわからない、何が起こっても不思議ではないリアルな山の中に身体を預けるわけです。
「いま、まさに、僕が、この、山の中に、いる!」
このライブ感というのは、映画の画面のフチを超えたどこまでも行ける果てしない世界の中に「いま、立っている」という感覚です。
フィールドが無数にあるので、遊び方も無限大
まず、日本の国土の70%が森林です。
一生かけても、その全部を遊びつくすことはできないでしょう。
そして、一つの山に対しても、いろんなアプローチの仕方があります。登山道も一つだけではなく、たくさんあるところもあります。上級者になると「バリエーションルート」といって登山道ではないところを歩く人や、「沢登り」といって、山の中の川を上流に向かって登る人もいます。
そして、山のなかには、いろんな植物や昆虫、動物がいます。
それらに詳しくなるだけで、楽しさは倍増するでしょう。こういった知識は山だけではなく、日常のひょんなところで役立つことがあります。そして、こういった知識がどんどん他の領域に連鎖し、趣味が増えて人生が豊かになることも大いにありえます。
天気や季節も、山が楽しくなる一つの要素です。
晴れの日の清々しさや、景色の美しさ。曇りの日の、山の中の時間が止まったような独特の雰囲気。雨の日の植物の瑞々しさや澄んだ空気、晴れの日とは違う山の景色。(初心者は、雨の日の登山は危険なのでやめておいた方がいいです)
季節も同様です。季節ごとに違った表情を見せてくれます。
このように、一つの山でも、「ルート」「動植物」「天気や季節」次第で、いろんなバリエーションを感じられます。そして、日本の70%が森林地帯のようです。
どうですか、夢を感じませんか?
防災にもつながる
防災のためにグッズを買い集めたいけど「何が必要なのかいまいちよく分からない」ということはありませんか。
登山(特にテント泊)をすると、人が生きていくために何が最低限必要なのか、ハッキリとわかります。
テント泊をよくする人からすると、今まで山でやっていたテント泊生活のフィールドが地上に移り変わるということなので、心理的なハードルが他の人に比べて低いのではないかと思います。
ですが、もちろん被災時の避難所や地上での生活は、山の生活とは違う特有の難しさがあると思います。
僕は被災した経験がないのであまり言えませんが、それでも、山で生活した時のノウハウを持っていれば、そうでない人に比べて、心構えがしやすいのではないかと思います。
あとは単純に、道具が便利です。
水を濾過する道具。お湯を沸かせるコンパクトな道具。ホイッスルやヘッドライト。寝袋やマット、テント。モバイルバッテリーやレインウェアなどです。
空気がおいしくて最高!
やっぱりこれです。
ここまでなんだかんだ言ってきましたが、美味しい空気のなか運動ができるって、単純に…最高です!
おわりに
登山の魅力を、思うがままに書き綴りました。
そして、魅力があるということは危険もあるということです。
登山は、危険です。
安易な気持ちで行くと、山の中で途方にくれることになるかもしれません。次の記事は、登山の危険性について紹介しています。この記事とセットで読んでみてください。
気軽にコメントしてね!