「自分には無理なのではないか」と思うようなチャレンジを達成すると、快感と共に、より難易度の高い次のチャレンジが見えてきます。そんな風にチャレンジを達成し続けていった先の世界を見てみたいです。
総歩行距離60km&低山22座チャレンジ / りゅーやんさんの西山(愛媛県松山市)・岩子山(愛媛県松山市高浜町一丁目)・垣生山(愛媛県松山市)の活動データ | YAMAP / ヤマップ
60kmチャレンジ
0km地点
朝7:30に家を出ます。
登校中の学生や、出勤中の会社員とすれ違いながら歩きます。小雨が降っていました。僕は寝起きの感覚で歩き続けます。
8km地点
まだまだ感覚が目覚めていない感じです。エンジンがかからずに、ただ歩いているという感じです。
ですが途中、スーパーでトイレを借りたときに「旅をしているみたいだなぁ!」と思い、気分が少し上がりました。
15km地点
明け方はポツポツ雨が降っていたのですが、晴れてきました。
綺麗な青空の中を歩きます。 「気持ちいい!」とか、そういう気分にはまだなれず、ふわふわした気分でした。そして、こんなにたくさんの人とすれ違うのに誰ともお喋りできていなかったので、なんとなく寂しい気持ちになりました。
さぁ、さてさて、梅津寺に着きました。
これから、経ヶ森を登ります。「懐かしい…‼︎」 経ヶ森も、さっき登ってきた垣生山も総合公園も、友人と登ったことがある山。その時の記憶が蘇ります。記憶って宝物だな。
経ヶ森の山頂でお昼ご飯のラーメンを食べます。
時刻は13:14。このあとは、この山を下りて反対側に見える山々まで舗装路歩きです。何時に終えられるんだろうか。下山を開始します。
20km地点
歩いていると、いかにも優しそうな柔和な表情のおじいちゃんがすれ違いざまになにか一言、話しかけてくれました。 車の音がうるさくて、おじいちゃんもマスク越しで、なんて言っているのか分からなかったのですが、「なんとなくこういうことを言っているのかな」と想像して返答しました。
間違っていたらいけないと思って、フレンドリーな表情と仕草も付け加えました。 気持ちが一気に晴れやかになりました。
やっぱり、人と交流するのはいいなと思いました。
なんとなく、世の中には「人と交流したい」というと、しらけるような雰囲気があるような気がして、こういう事を言いづらかったのですが、やっぱりそうだな。僕はそうだなと思いました。
26km地点
天神山の長い階段を上ると、神社に着きました。
そして遠くから、おばちゃんがダブルストックでこっちに向かって歩いて来ています。会釈をすると返してくれました。 なんとなく優しそうな雰囲気だなと思い、先に進まずに、その場でザックをガサゴソしてこっちに着くのを待っていました。
そして近づいてきたときに挨拶をすると、向こうも挨拶をしてくれました。そして、いろいろ話してくれました。
近所に住んでいる方らしく、この山に登ってトレーニングをするのが日課だそうです。
そして、この神社は菅原道真が流されたときに立ち寄った場所らしく、芝をしいて生活していたことから「芝敷天満宮」と呼ばれるそう。ちなみに、今治にある「綱敷天満宮」は綱をしいていたからだそうだ。
「へぇ、そうなのか!」
歴史のことも勉強してみたいと思っていたので、楽しめました。そしてしばらく話して、グッバイしました。
そしてまた、歩きます。
歩いていると、左手にあるお家から「ちょっと」と声がしました。見てみると、そのおばちゃんでした。手に缶コーヒーを持っている。
「おぉ!」
くれるのか、くれるのか…
缶コーヒをくれた〜!!!!
実はコーヒーが飲めないのだけど、すごく嬉しかった。コーヒーはそのままザックに入れた。嬉しい重量だ。
32km地点
これから、この旅の一番の難所ともいえる本格的な山「天神山&御幸寺山」に入ります。
時刻は16:40。
陽はだいぶ傾いている。日没までにこの山を終わらせたかったけど、なんとか行けそうだなと思った。だけど夕暮れの中、山を降りるのではなく、山に登るというのはなかなか心細かったです。この旅で初めて心細くなりました。
一人で人気のない暮れゆく山に登る。その時に、今までの思い出が蘇りました。パートナーや友人との時間や、もらって嬉しかった言葉…。そういった、暗がりの中の灯火のような思い出に支えられて、山を歩きます。思い出は力になります。思い出がなかったら、不安や心細さに潰されると思います。一人でもやっていけるのは、本当は一人ではないからです。
「しかし、山を歩くのは楽しいな!」
この落ち葉と土だらけの道ならば、ずっと歩けるような気がする。 そして、御幸寺山に到着。 まだ明るかったので、ラーメンでエネルギー補給です。
食べ終わる頃にはだいぶ、暗くなっていました。
ここでヘッドライトの出番です! 「アドベンチャーレーサーみたいで、かっこいい!」と思いながら、ゆっくり下ります。
真っ暗になりました。
下ったあとの舗装路歩きも、かっこいいのでヘッドライトをつけたまま歩きます。
35km地点
道後の「愛宕山」を目指します。
その道中が人気のない山道で、とにかく怖いんです。
「襲われないかな」と不安になりながらも、足を進めます。 そして、愛宕山の登山口に人が乗った車がとまっていました。「出てこないでね」と祈りながら登山道に入ります。
この登山道は一本道。「もし、車の人が出てきてバタンと戸を閉め、こっちに向かって歩いてきたら」という想像が止まりません。「来るなよ、来るなよ」と祈りながら進みます。
「もし、来たら」
登山道を外れて、山の中に入ろう。僕はマウンテンクライマーだ。ここは僕の庭のようなものだ、きっと逃げられる。「逃げられるだろうか?」この満身創痍の身体で…
とにかくいろんなことを考えます。
そして、この夜の人気のない登山道で会いたくないのは「猪でも幽霊でもなく、人だ!」と思いました。 こんなところに、人がいたら怖すぎる。「人がいませんように…」と進みます。
心配は杞憂におわりました。
愛宕山を降りて次の「常光寺山」に向けて、人気のない真っ暗な山道を再び歩きます。常光寺山の山頂にある白い巨大石仏の頭が、遠くの暗い山の上にうっすら見えます。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
「怖い、怖すぎる!」「もう行きたくない」と半泣きの心で歩きます。とりあえず歩きます。
「もう次の山はやめようかな」と思ったり、でも「これをやり遂げたあとの達成感がどんなものか知りたい」と思ったり。
あぁ、もう嫌だ。怖い、帰りたい、と呟き続けていると登山口に着きました。
登山道を見た感じ、歩きやすそう。
「もう、行くか!」
えーい!と踏み出します。
そして、山頂。
山頂の石仏は凄かったのですが、もう怖くてそれどころじゃなかったです。人がいるのが一番怖いけど、それでなくても幽霊が出てきそうな気がして、毎秒毎秒、気を引き締め続けていました。
こわいこわいこわいこわい!と言いながら、登山道を引き返します。
とにかく怖い!
そして、 降りました。
「ふぅ…」
コンビニに立ち寄ります。
おにぎりとコーラを買います。そしてなんと、店内にイートインスペースがありました!座ると、身体がフワッと気持ち良くなり、天国にいるような気分になりました。
「あぁ、良い…」
食べた後は、次の山「淡路ヶ峠」に向けて出発です。
40km地点
時刻は19:45。
登山口付近の舗装路を歩いている時に顔をあげたら、淡路ヶ峠が見えました。ものすごく高く見えました。実際は標高273mですが、500mくらいに見えます。「真っ暗な中、これ、登るの…?」「嫌だ、帰りたい…」と思いながら、歩きます。
登山口に続く道を歩いていましたが、もうすでに雰囲気が怖い。
この時点で、もう淡路ヶ峠はやめて引き返そうと思いました。
ですが、一応登山口まで歩きます。
登山道はフラットで整備されていました。
そして、看板には「山頂まで900m」と書かれていました。「あっ、これはいける…」と思い、登ることにしました。
登山道のところどころにある看板を見るたびにホッとします。人工物万歳!
そして、山頂。
夜景はきれいですが、すぐリターンです。
そして、桑原中学校の横に降り立ちました。
体育館でバレーボールをやっていました。大きな声が聞こえます。
人と会話ができて嬉しいと言ったり、一人が好きだから単独登山をしていたり、夜の山道で人とすれ違うのは怖すぎると言ったり、そして今度は人の声が聞けてホッとしたり…。
ははは、こんなもんです。
そして、星岡に向けて歩きます。
ここまで45kmを歩いていました。「やれば、できるもんだなぁ…。」 そして、なんだかものすごく楽しくなってきました!
「冒険しているな!」「ははは、なんだこれ!」という感じです。
50km地点
心細さがピークに達しました。
関節が痛みだし、筋肉はカチコチ。ふくらはぎがちょっと痛い。寒い、暗い、帰りたい。
そして、山に登る。
「星岡山」
登山口までの道の横にずらっとお墓が並ぶ。僕は幽霊とか、そういうものにはあまり関心がない人間です。
ですが、その道の写真を撮ろうとシャッターを切った瞬間、「カーン!」と、道の脇にあるガードーレールに物が当たったような音がしました。人もいないし、風もない。
「気にしない、気にしない」そう思って進みましたが、そのあとの登山道はチェーンで封鎖されていました。
(よかった、これで登らなくて済む…。本当は怖かった。今すぐ逃げ出したい)
52km地点
そのあと、最後の山である「松山城」に向けて歩きます。
ここまで、52km歩いている。時刻は22:22。「どれだけ充実した一日を送ってるんだよ」とツッコむ。足がパンパンで、関節がキシキシ。この身体が物語っている。
心細さはマックス。不安…ばかり。
帰れる家があることが本当に有難い。家や居場所は本当に大切なんだと痛感。
街に入る。
怖い。
僕は夜の街の雰囲気が苦手なので、これまた違った意味で怖い。
夜、暗い道を歩いていると、昼間とガラッと変わった道を歩いていると、昼間のことを思い出す。まるで別の世界のような、だいぶ昔のことのような昼の世界。おばちゃんが缶コーヒーをくれた、あの明るい世界を思い出す。たった半日しか経っていないのが、信じられない。
そして、松山城。
お城近くまで登ったが、深夜23:30だったので門は閉まっていた。しょうがない。 これで全ての山を登った。あとは帰るだけだ。
家までの暗い道は、とても心細かった。とても寂しかった。
60km地点
そして、家。
倒れ込んだ。立てない。
シャワーを浴びるために頑張って立つけど、脚が痛すぎてちゃんと立てないし、歩けない。おじいちゃんになったときの身体はこんな感じなのかな、と思った。
夜明けが待ち遠しい。明日の明るい昼の世界が恋しい。これほど明日を待ち望んだ日は無かった。明日が無事来ますように、と眠った。
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