【テアラロア Day38】波は繰り返す

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テントの外から声が聞こえる

朝8:00に目が覚めた。

爆睡だった。そして、それからもしばらくウトウトしていると、テントの外で僕に向けた声が聞こえた。

誰だろうと思って、顔をテントの外に出すと、反対方向から来た三人組のTAハイカーだった。

どうやら昨日のハットで一緒に泊まっていたヤンに「彼の様子を見てほしい」と言われたらしく、声をかけてくれた。

薬を飲んでいるので、昨日に比べて体調はだいぶ良くなっていた。

三人組としばらく話し、別れる。ちょっと心強かった。

そのあとはテントでのんびりしたあと、重い腰を上げて、出発の準備をする。

風邪はだいぶ良くなったけど、足裏の水ぶくれと腰のシコリがあるので、相変わらず満足に歩けない。

後向き

しばらく歩くと、高い山が見えた。

明日以降登る山だ。今まで登ってきた山に比べたら、特別高いわけではないけど、いまの体調の悪い自分には、超えられない壁のようにみえた。

気持ちが後向きになる。

越えられるだろうか、この山を。そして、これから先に待ち構える山々を、僕は本当に歩けるんだろうか。

テアラロアを終えられる自信が、完全になかった。

ただ「いまは体調が悪いから、そんなふうに思うんだ」と自分に言い聞かせた。

そして、いつもの半分の距離も歩いていないところで、風邪の嫌な倦怠感や関節の痛みがあらわれた。

これ以上は、無理だ。

しばらく進んだところにある、川沿いの地面にテントを張った。

昨日と同じく、テントを張るのがしんどい。ウキウキしながらテントを張っていた過去の日々が嘘のようだ。

そして中に入り、薬を飲み、ご飯を食べる。

人生は絶妙なバランスで僕を運ぶ

横になる。

幸運なことに、このセクションは必要以上の食べ物を持ち運んでいた。あと三日分はある。そしてあと、ニ・三日でこのセクションを終えられそうだった。

なんでこんなに食料があるかというと、このセクションが終わると、通常はみんなヒッチハイクで「メスベン」という街に行き、食料を補給する。

ただ、僕はヒッチハイクをしたくなかったので、トワイゼルの街で10日分の食料を買って、持ち運んでいた。

神様、ありがとう。

二つの言葉

そして、テントで横になりながら、二つの言葉を思い出していた。

一つはサムの言葉、もう一つはベリーの言葉だ。

サムと一緒に歩いていたときに、だいぶ前にキャンプ場の受付の態度に、精神的大ダメージをくらった話をしていた。

そしてサムが僕に同情してくれたあと、「なにか物事をしていたら、一回や二回はそういう嫌な出来事に出会うよね」と言っていた。

そのときに「一回や二回なんだ」と思った。一回だけならいいけど、もう一回はどこで起こるんだろうと少し不安だったから、「これが二回目で、これから先は無事に歩けますように」

と思った。

そしてもう一つ、僕が精神的大ダメージをくらって、立ち直れないときにベリーがくれた言葉を思い出していた。

「人生も体調もメンタルも、大きな波や小さな波の繰り返しだから、ただその波が来ているのを感じて、通り過ぎるのを待てばいい」「そういうことは、やがて僕の身にも起きるんだろうなぁ…」

前回はメンタルだったけど、今回は体調だ。

そうか、ただこの時間を感じて、それが過ぎるのを待てばいいんだ。みんなと離れて焦る気持ちもあるけど、ベリーの言葉が僕の指針になった。

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著者

栃木県在住の34歳。
34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越したばかり。仕事もやめて、無職になる。同性愛者・躁うつ病患者(現在は寛解している)。趣味は登山。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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