【テアラロア Day36】迫りくるタイムリミット

もくじ

タイムリミット

5時にセットしたアラームで起きる。

外は真っ暗で寒い。

あぁ、動きたくない。でも、ベリーに会いたい気持ちが上回った。

朝ごはんはアーモンドのみで、とにかくさっさと準備をする。朝5:50、出発の準備が整った。サムもケイロブも同じタイミングで準備が終わった。

三人で出発する。

一昨日会ったジョースは「ベリーたちのシャトルバスは10:00に着く」といっていたけど、ベリーと一緒にいるルーカスは「10:30から11:00にシャトルバスが着く」とケイロブに伝えていた。

なので、とりあえず10:00を目標にして歩く。

間に合うと思っていたけど、今日の道は思った以上にハードだった。

深くて流れの速い川を何度も渡る。

サムとケイロブに「川を渡るときは、ザックのバックルを一つだけ残して、あとは全部外したほうがいい。それとストックと紐も手に通さないほうがいい。そうしたら、もし流されたとしても、ザックもストックも簡単に外せて安全だから」と教わった。

みんなで、浅くて、流れの遅い場所を探しながら川を渡る。

そうやって歩いているうちに10:00が来た。

シャトルバスが到着する場所までは、まだ2kmほどある。ルーカスが言っていた「10:30から11:00に来る」というのを信じて、スピードは緩めずに、進み続ける。

そして最後の一キロは歩きやすい道になった。みんなで走る。

途中からサムが先頭を走った。足に水ぶくれがある僕とケイロブは遅れをとる。

「ありがとう、サム」と思いながら、一人がつけばシャトルバスを引き止めてくれると思い、ヘロヘロの僕とケイロブはスピードを緩める。

そして10:30、バス停に着いた。

ベリーたちは、いなかった。代わりに、ケイロブと一緒にテアラロアを歩いていたアメリカ人の「ローズ」と、ドイツ人の「ヤン」がいた。

二人の話によると、10分前にシャトルバスは出発したということだった。そしてベリーが「りゅうやは強い。必ず間に合う」と話していたことをヤンに教えてもらい、嬉しかったのと同時に、「会いたかったなぁ」とさみしくなった。

まさかの渡渉

「そうか、シャトルバスは行ってしまったか」と思っていたら、ヤンが「話によると、今は川を渡るには、絶好のコンディションらしいから、これからローズと川を渡るんだけど、一緒に渡る?」と聞かれたので、五人全員で渡ることにした。

そしてヤンが渡りやすいポイントまで僕たちを先導する。

ちなみにヤンは毎年、ロングトレイルを歩いている。ローズもアメリカのロングトレイル「パシフィッククレストトレイル4000km」と「アパラチアントレイル4000km」を歩いたことのある経験者だ。

僕は渡渉が怖かったので、ローズに「渡渉するときの、コツってあるの?」と聞くと、みんなで腰に手をまわしたり、ダイヤモンドの陣形になって固まって歩く方法や、基本的な歩き方を教えてくれた。

でも、今回はそんなことをしなくても渡れるコンディションなので、心配はいらないということだった。

そして実際に渡る。

本当に全く怖くなかった。むしろ、今日のバス停に着く前に渡った川や、前に渡ったアフリリ・リバーの方が怖かった。

水ぶくれのひどい僕とケイロブは、河原の石だらけの上を歩くと足が痛いので、そっちの方が大変だった。

そして途中にある流れが遅く深い川に、上半身裸になってみんなで飛び込んだ。身体と気持ちがさっぱりする。

川は3時間かけて、渡り終えた。

そのあとは、「ポッツ・ロッジ」というロッジにみんなで向かい、ビールとピザを食べる。

いうまでもなく最高だ。

ケイロブとヤン

そして、ロビーのソファーに腰掛ける。昨日から歩いてばかりで、お疲れの僕とケイロブは一瞬寝落ちした。サムはものすごく体力があるので、ヤンと話している。

そしてしばらくして重い腰を上げる。濡れた靴下と靴を履く。歩くたびに痛む水ぶくれを我慢しながら、テントを張れそうな場所まで歩いた。

ちなみに、ひどい水ぶくれの写真を撮ったので興味のある人だけ見てほしい。グロテスクなので閲覧注意だ。

ここをクリック

先にシャトルバスで川を迂回したベリーたちは僕たちよりも10kmほど先にいるらしい。追いつきたかったけど、足のコンディションが酷かったので、ケイロブ&ローズと同じ場所にテントを張り、今日を終えた。

サムとヤンはまだ進むということだった。

足りている幸せ

ちなみに今日テントを張った場所には川がない。飲み水を十分に用意していなかったけど、ケイロブが700mlほど水をくれた。

僕は水をたくさん飲みたい人間なので、700mlでは少し物足りないけれど、冷静に考えれば700mlあれば十分だと気付いた。

今日は昨日と違い、完全なフラットの地面で眠れる。

水が大量にある日や、フラットな地面で眠れる日、電波が届くのでスマホをいじれる日、モバイルバッテリーの残量がたくさんあるので思う存分読書ができる日、川で水浴びをしたから寝るときに身体が気持ちいい日。

いろんな日がある。全てがそろうことは滅多にない。

今日は水が少ない日だけど、フラットな地面と、清潔な身体で眠れる日だ。

そう気付くと、気持ちが少し落ち着いた。

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著者

栃木県在住の34歳。
34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越したばかり。仕事もやめて、無職になる。同性愛者・躁うつ病患者(現在は寛解している)。趣味は登山。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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