スタック・サドル
今日は、テアラロア上にある最高標高1925mの「スタック・サドル」を通る日だ。
朝起きると、それぞれ支度が早い順に出発した。僕とルルーが最後方からのスタートだ。

途中でルルーのお父さんを捕まえて、山頂で休憩していたサムとマヌーを捕まえた。ルルーは後方に下がり、僕はそのままスタックサドルへ向かう。

なんでこんなに急いでいるかというと、テカポの街にいるときにベリーからメッセージが届いたからだ。
実はこの山脈を降りたあとに、めちゃくちゃ大きい川がある。渡る人もいるみたいだけど、危険なので迂回することが推奨されている。
この川をぐるーっと130kmほどヒッチハイクで迂回しないといけない。
でも、ただでさえヒッチハイクは気をつかうのに、130kmもとなると、かなりの人に乗せてもらわないといけない。
そこで一つ選択肢がある。
シャトルバスを予約することだ。一人で乗ると四万円かかるけど、人が増えるごとに料金が半分になっていくシステムだ。
ベリーからのメッセージには「ルーカス&キムと合流して、この山脈を降りたらシャトルバスに乗るから、できればりゅうやも一緒に乗れたらいいな」とあった。
ベリーたちは僕の一日先を歩いている。だから、そのベリーたちに追いつくために、急いでいた。
そしてテアラロア最高標高のスタック・サドルが見えた。険しい坂道を登る。


ヘロヘロになりながら登り、山頂に立った。

山頂には何人か人がいたので「ここが、スタック・サドルですよね?」と何気なく聞くと「違うよ。スタックサドルはあっちだよ」と言われた。
地図を見てみると、2070mのビューゼンバーグ・ピークという山に登っていたことがわかった。

引き返すしかないので、引き返す。
そして、スタックサドルに向かっていると、サムが追いついてきた。どうやらサムも僕と同じで、ベリーたちのシャトルバスに乗りたいみたいだ。

そして、二人で黙々と進んだ。


ケイロブ再登場
最初のハットにつくと、中にはケイロブがいた!
どうやら、ロード歩きの区間は自転車を使ったらしい。サムとケイロブは初対面なので、中でいろいろ話す。
ケイロブは、天気がよければ、もともと一緒に来ていた「ローズ」という女性と川を一緒に渡る計画だったけど、脚を痛めてしまったので、歩くペースが落ちて離れ離れになってしまった。
なので、僕とサム、そしてケイロブの三人でなんとしてもベリーたちに追いつこうという話になり一緒に歩くことになった。

長い一日
アメリカ人のケイロブ、ニュージーランド人のサム、そして日本人の僕で、それぞれの国の話をしながら歩く。
ここまででも結構な距離を歩いていたけど、ベリーたちに追いつくにはまだまだ歩かないといけない。
いつもだったらテントを張る時間でも、三人でひたすら歩き続けた。
日が低くなって、三人とも山の影に入り、身体が冷える。風も冷たくなってきた。

そして、小さな川を渡渉していると、ケイロブが川の底から何かを取り上げた。
「GoPro13」だ!

GoProが川の底に沈んでいた。「そんなことがあるんだ!」とみんなで笑いながら、また歩く。
時刻は21時。
こんなこと、人生でめったに経験できない。三人で、疲れながらも歩き続ける。瞬間瞬間が幸せだった。

サムも「自分にチャレンジするのって、すごく楽しい!」と前向きだ。ケイロブもアメリカのアパラチアントレイルという4000kmのロングトレイルを歩いた経験者だ。
そしてヘロヘロになりながら、サムとケイロブが食べ物の話をし始めた。
いろんな料理名が飛び交い、僕はそのたびに、そのイメージがはっきりと思い浮かぶ。
ケイロブが「アメリカに帰ったら、最初に行きたいレストランがある」と宣言し始めた。「そこのメニューはチキンの足とポテトしかメニューがなくて、独特な味のソースがついてくる。そのレストランの味が大好きなんだ」といっていて、「いいなぁ!!」と強烈に思い「ナイス!!」と伝えた。
みんな疲れてはいるけど、気分は前向きだ。
僕はみんなと喋ろうとするけど、英単語が思い浮かばなくなって、それが可笑しかった。
そして21:45。
「ここでテントを張ろう」ということになって、川のそばにテントを張る。

きれいなフラットの地面がない場所だから、みんな、なるべくマシなところを歩いて探す。
完璧なフラットの地面がなくても、疲れた身体を横たえられる、そこそこの地面があって幸せだった。

明日はシャトルバスが朝の10時に来る。ここからバス乗り場まで13kmある。みんな5時に起きて、6時には出発しようということになった。
そして、長い一日を終えた。
気軽にコメントしてね!