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【テアラロア Day22】「帰国」を考えながら歩いた一日

もくじ

山に入りたい

一夜が明けた。

とても寒い朝だった。今日から三日間、山に入る。山に入りたくて仕方がなかった。街を早く出たかった。

ドネック&ベルはレンタカーを借りニュージーランドを旅する、ベルは「もしかしたらワナカで会えるかも、もしかしたらどこかのトレイルで会えるかも、ふふふ」といっていた。

そして僕はベリーと出発する。ベリーは途中のカフェでコーヒーを飲んでいくということだった。

僕は早く山に入りたいので、ここで一度別れた。

一人で歩く。気持ちは相変わらず沈んだままだった。

人と話したくなかった。英語を話したくなくなった。僕の英語が下手なせいで、彼らを疲れさせているんじゃないかと、申し訳ない気持ちになる。

ただ一言いっておくと、これまで22日間本当にたくさんの人と話してきて、数えきれないくらい相手の言葉を聞き返したり、聞き返されたりしてきたけど、嫌な態度を取る人は、その人以外に、誰もいなかった。みんな優しく対応してくれていた。

100回中の1回に気を取られている僕の問題でもある。

でも、この日が寒くて、雨も降っていてよかった。僕の落ち込んだ気持ちにマッチする。少し気分が安らぐ。

そして、後ろからベリーが追いついた。相変わらず歩くのが速い。

「気分はどう?」と聞かれて、まだ昨日の出来事がずっと頭の中で再生さてれいると伝えた。

すると、ベリーは「何度でも再生したらいい。何度でも再生していたら、だんだん嫌な気持ちが薄れてゆくから、その嫌な気分が通り過ぎるまで再生したらいい」と教えてくれた。

今日は、山を二回も越えたり、川の中を流れに逆らいながら一時間ほど歩いたりした。

この川の中を上流に向かって歩く
人口0の町「メイスタウン」を通る

きれいな景色に囲まれていたけど、頭の中に「日本に帰りたい」という思いが浮かんでいた。

だけど、こんなことをするのは一生でおそらく今回だけだろうから、まだまだ粘りたい。

そして沈んだ気持ちのまま、今日のハットに辿り着いた。

文化の違い

そして先に到着していたベリーに「僕のいまの気持ちを聞いてほしい、そしたら前に進めるから」というと、聞いてくれた。

毎日ホームシックに悩まされていること。この旅で初めて日本に帰ろうかなと頭によぎったこと、それでも帰らずに頑張りたいこと。そしてそんな僕を応援してほしいということ。

「もちろん!」と応えてくれた。

応援してほしいといったのは、誰かの支えがなかったら、自分の心が折れてしまいそうな気分だったからだ。

そして、昨日の出来事について「大きなため息をつくのは西洋の文化では自然なことなのか」と聞くと、「YES!」と返ってきた。

そして、これが文化の違いだということだった。

そうだったのか。

ベリーは「もしそれを日本でやられたら、ものすごく侮辱された気持ちになるだろうね。自分たちは、ただフラストレーションをシェアしているだけだから、無視したらいいんだよ」

「だから、あの女性はりゅうやに対して怒っているというわけでは全くないんだよ」といった。

なるほど、あの女性も僕に対して「なんでこの人は怒っているんだろう」と思ったに違いない。

文化のすれ違いから起こった出来事だったんだ。

少し問題が解決した。

修学旅行のような夜

日中はそんなことばかり考えて、東洋の文化に戻りたいと思っていたけど、ハットに着いてから、テアラロアの反対方向から来た人たちとテーブルを囲んで話した。

すごく楽しい時間だった。

そして、オーストラリアから来た、ものすごくエネルギッシュで優しい女性が食べているインド・スパイシー・ライスに「美味しそう…」とつぶやいたら、同じものをくれた。

夜、いろんな人と同じハットで眠る。修学旅行みたいだ。子供の時の修学旅行はあまり楽しめなかったけど、遅れてやってきた青春を味わいながら、かすかなトキメキを胸に目を閉じた。

どうやら、まだ旅を続けられそうだ。

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著者

栃木県在住の34歳。
34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越したばかり。仕事もやめて、無職になる。同性愛者・躁うつ病患者(現在は寛解している)。趣味は登山。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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