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【ロングトレイル】しあわせの感受性を取り戻した3泊4日の山旅日記

もくじ

はじめに

登山をはじめて一年。3泊4日の山旅に挑戦しました。

1泊2日のテント泊なら数回はしたことがあるけど、こんなに長い山行ははじめて。場所は愛媛県の今治市から東温市まで、高縄半島を縦断する旅です。

ちなみに「当たり前のことが、実は一番幸せなことなんだ」という言葉がありますよね。

この山旅で不自由さを味わうことで、その言葉の意味が身体に染みわたりました。そして、日常生活の一つ一つに幸せを感じずにはいられない体質に変わりました。

そうなるに至った過程を、日記という形で紹介します。

山旅前日

冷蔵庫の野菜を使い切り、観葉植物に水をたっぷりあげ、食器を全部洗い、「これがこの4日で最後のお風呂だ」と思いながらお風呂に入り、「これが最後のちゃんとした食事だ」と思いながら晩御飯を食べていました。

だんだん、心細くなってきて不安が心に広がってゆきます。

少しドキドキしていたので、夜もあまり寝付けず、眠剤を飲んでなんとか寝ました。

1日目

朝が来ました。

いよいよこの日が来てしまった。「本当にこれから行くのか?」「いや、絶対行きたいし、行くに決まってる」けど、怖くて怖くてドキドキしながら朝の支度をしていました。

部屋を出て、バス停まで歩きます。すごく緊張してました。不安で胸がバクバクしていて苦しかったです。

せとうちバスという初めて乗るバスなのでシステムがよく分からず不安でしたが、座席に座ると少しホッとしました。街の人混みとはこれでしばらくお別れ。何十分後には、人のいない田舎に降ろしてくれる。

バスは山道を行きます。

グネグネしていたので、すぐに車酔いになりました。気持ち悪さに耐えながら、ずっと目の前を見ていました。

竜岡にポツンと一人。

玉川湖のバス停「竜岡たつおか」に着きました。

バスを出る時に運転手さんが、「気をつけて」か何か声をかけてくれました。僕は緊張していたので、カタコトで「ありがとうございます」と返しました。

最初は、舗装路歩き。

そして、鈍川にぶかわ温泉峡に着きました。

ここで、のんびりするであろう人とすれ違いました。ですが僕にとって、ここは目的地ではなくスタートなんだと、心でつぶやきました。

登山口に来ました。

歩き始めます。

まだ、緊張していました。普段の登山では緊張しなくなっていたので、初めて登山をする時みたいに緊張しているなと思いました。登山+緊張=怪我という連想が頭の中に広がっていました。

入山してすぐにマムシを見つけました。びくーっと飛び上がりました。

ドキドキ…。

落ち着けと自分に言い聞かせながら、また歩きます。とにかく頭が真っ白で「歩いていて気持ちいいなぁ」とか「緑が綺麗だなぁ」とか一切感じませんでした。

そして、今朝は母に電話をしても気付いていないのか、出てくれませんでした。

行く前に、電話で「行ってきます」といいたかったので、まだ電波がある山の中で電話をすると、つながりました。

しばらく話をしたあと「でも話をするためにここに来たんじゃない。山に本格的に入るぞ」と電話を切りました。

最初の山

そしてしばらく歩き、最初のピーク「丸山」に到着しました!

思ったことは「とりあえず最初のピークに着いたけど、道はまだまだある。次に行かなくては」と焦り気味。そこから、次の山を目指して歩きました。

ただ、黙々と歩いていました。

人の気配もありません。ただただ、アップダウンに息を切らし、進みます。とにかくこの日はずっと緊張していたので、あまり感想が思い浮かびませんでした。

そして、「楢原山」ならばらざんに着きました!

楢原山

だいぶ疲れていました。

二つ目のピークを踏み、ゴールの東温市に少し近づいたので、気持ちに余裕がでてきました。

楢原山の後は、すぐに「古権現ふるごんげん山」に向けて出発しました。

古権現山というマイナーな山で、テント泊がしたかったのです。

コースタイムでは30分かかるところでしたが、思いの外キツく、体力もかすれがすれになりながら三つ目のピークそして、今日のゴールに辿り着きました。

今日のホテル 出入りがしづらかった。

テントを張り、のんびりします。

夜になると、木々の間から少しだけ、今治いまばりの夜景が見えてちょっぴり得したような気持ちになりました。あぁ、テントをここに張ってよかった。そして、寝ます…。

寝ていると、外から人の気配を感じました。

ビックリして様子を伺っていると、木の棒を持った男が一人、テントのジッパーを開けてきました。僕は恐怖し、ストックで必死に応戦しました。そして、目が覚めました。

悪夢でした…。

そして、また寝ると…

テントが動いているのに気が付きました。「なんだろう」と思って観察していると、テントが風に押されて、稜線上をスライドしていることに気が付きました!

「やばい!逃げなくては!」と思いジッパーを開けると、そこはもう稜線の終わり、つまり崖の手前でした。そのまま、テントごと空中に飛ばされて三津みつという港町に着地しました。

奇跡的に無傷だったものの、「ロングトレイルの続きが出来なくなる」「どうしよう!」と焦る夢でした。

2日目

翌朝、目が覚めました。

ああ、悪夢にうなされながらも、しっかり寝れた。「朝が来た!」という気持ち。朝ごはんを食べ、テントを撤収。次の山に向かいます。

途中で沢がありました。

ここに沢があるのはわかっていたことなので、水をみ、上半身を洗い、Tシャツ、帽子、タオルの洗濯をしました。そして沢の横に座り、お昼ご飯を作りながらのんびり過ごしました。

沢での水浴びや洗濯は最高でした。「生き返った!」と思いました。

「身体を清潔にするだけでこんなに気分が違うのか」と大発見でした。

そして、また立ち上がります。

峠に出ました。ベンチで一休みしながら、これから向かう山を見ていました。前に知人と一緒に登ったコースです。「今日は一人でここにいるんだな」と思いました。

そして、再び歩きます。

その知人に教えてもらった、山椒の木を見つけました。そして葉っぱをムシャムシャ…。口の中に独特の香りが広がり、リフレッシュできました。

山の景色
唯一の景観

南三方ヶ森」みなみさんぽうがもりまで景観が一箇所しかない地味な道を、アップダウンを繰り返しながら黙々と進みます。

そして、南三方ヶ森、到着です。

南三方ヶ森までの道が、今回のコースで一番ハードだろうなと思っていましたが、ここからが一番大変でした。

キツい!

傾斜の凄い急登が沢山あって、道も両端が切れ落ちている。「ただ、1mを頑張って進む」ことをひたすら繰り返しました。

山の景色。新緑の景色
きつかったけど、緑もきれいだった

そして頑張って、なんとか「明神ヶ森」みょうじんがもりに到着!

山頂にある丸太の上に座り、しばらくポーっとしていました。

ですが、この明神ヶ森は二回ほど登ったことがある山。なんとなく、アウェーからホームに戻ったような気分になり、ホッとしました。「ゴールまで大分近づいているな」と心強くなりました。

「福見山」も通り過ぎ、名もない小ピークにテントを張ります。

3日目

ついに、3日目です。

朝起きて、沢に向かいます。

いつもの様に、水浴び、水汲み、洗濯をしました。「全裸になって、水に浸かりたい…!」と思いましたが、人が来たら通報されると思い、できませんでした。

ホントにホントに、水や沢が山の中ではオアシスの様に感じました。

今回、山で暮らしてみて気付いたのは、人間の生活には、自分が想像していたよりもはるかに多くの場面で水が必要だということでした。そして、山で得られる水は貴重でした。

山の中にある沢の様子
今日の沢

沢の横に座り、水を汲みながら、水の流れる音を聞いていました。

喉を渇かせながら、ゼェゼェと大地を歩いてきた僕には、水の流れる豊かな音が「生命の水」と呼ぶにふさわしいと実感しました。

まだまだ沢に居たかったのですが、出発です。

この日は、そんなに歩かなくても良い日だったので、のんびり歩きました。途中で立ち止まって写真を撮ったり、のんびりティータイムをとったり、歌を歌ったりしながら歩きました。

この日も、いつもどおり地面を見ながら歩いていましたが「なんだか今までになくスムーズに歩けているなと」気付きました。

山で昼食を食べる
お昼ごはん

途中、鉄塔を通過する時に、クマバチが8匹くらい乱れ飛んでいました。

「おぉぉ…」と思いましたが、クマバチは優しいと聞いたことがあるので、姿勢を低く攻撃的なオーラを出さず、サササ…と通り抜けました。

綺麗な森林

そして目的地に着き、テントを広げます。

景色のよいテント場
今日のホテルは眺めがいい!

テントの中で休んでいると、人の気配がしました。

外に出て確かめると、おじちゃんがいました。

優しい雰囲気の人で、少し話をしました。それが、この旅で出会った初めての人でした。

それくらい、東温市の街に近づいてきていたので、夜テントの中で寝る時に人に襲われないか不安でした。

でも心配してもどうしようもなかったので、大丈夫だということにして、寝ました。

最終日

さぁ、ゴールまであと少しです!

残りの道はずっと林道なので、気持ち的にはもう「ほぼ終わった」ような感覚でした。なので水も200mlしか残していません。

まぁ、大丈夫でしょう!

山の中にある林道。
こんな道

ですが最後の最後に、シダ植物が生い茂っているジャングルゾーンがありました。

「もう、行くしかないだろ!ゴールはそこだ!」と思いながらも、慎重に。でも、はやる気持ちを抑えきれず一度コケました。

はやる気持ちと慎重に行く気持ちのせめぎ合いでした。

シダ植物が生い茂っている。
こんな道!

ジャングルを抜けて再び林道に。そして…

東温市の街にでました!!!

よくここまで歩いたなぁ…。本当に今治から東温市まで歩いたんだなぁ…。涙は出なかったけど、泣きたい気持ちになりました。

あぁ…街だ!!

そして、久しぶりの街歩きです。

自動販売機でジュースを買います。「なんて便利なんだ!」と驚きました。

街には人がいっぱいいました。「面白い光景だなぁ」と思いました。そして、駅に着きました。電車に乗って、家の近くの駅で降ります。歩きます。家に着きました…。

家に着いて布団の上に横に寝転がりました。

ちょっと前までは「僕にはできない」と思っていたことを、ついさっき、やってきたんだ。「今治市から東温市まで、山の中だけを通って歩いたんだ」

この僕が…。

そんなことを考えながら、不思議な気持ちで空中を眺めていました。

おわりに

今回の山旅で思ったのは、想像するのと実際に経験するのでは全く違うこと。山旅の動画をたくさん見ていたけど、実際にやってみて実感として理解できたことがたくさんありました。

まず、普段の生活で、自分が思うよりはるかに多くの場面で水が必要だということがわかったこと。そして、その水が、蛇口をひねるだけで簡単に手に入る現代の生活は本当に便利で快適だということ。

家があること。雨や風にびくともせず、頑丈で、立って中を動き回れるほどの広さがあり、ドアのカギを閉めれば、夜も安心して眠れる。暑い日には冷房を、寒い日には暖房をつけられる。中にはいろんな物を置けて、冷蔵庫からは食材がたくさん出てくる。いくらでも好きな料理を作れる。

フワフワの布団で眠れる。いつでもシャワーを浴びたり、気楽に排泄ができる…。

山旅をして、その楽しさと共に不自由さを味わったことで、普段の地味な生活がとても有難くて、いちいち幸せを感じるようになりました。

「当たり前のことが、実は一番幸せなことなんだ」という言葉の意味を実感させてくれた3泊4日でした。

はじめてのロングトレイル(今治〜東温市) / りゅーやんさんの高森山(愛媛県松山市)古権現山河原樋山の活動データ | YAMAP / ヤマップ
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著者

栃木県在住の34歳。
34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越したばかり。仕事もやめて、無職になる。同性愛者・躁うつ病患者(現在は寛解している)。趣味は登山。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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