【テアラロア Day70】地上の香り

歩き始める。

テアラロアを始めたばかりの頃は、いろんなことが新鮮で、たくさんのことを感じていた。

だけど今はもう、心の受け皿がいっぱいになってしまって、もうこれ以上、感じることができなくなった。

ゴールをめざして、急ぎ足で歩く。

歩き進めると、TAハイカーだけではなく、綺麗な服装をした観光客らしき人や、地元のデイハイカーたちが増え始めた。

そして駐車場に置いてある車も見えた。

「ここはもう、今までのようなTAハイカーしかいないような山ではないんだ」

TAハイカーとは雰囲気が違う、街の人の雰囲気に少し戸惑いながらも、それでも山を降りたことで、張り詰めていた気が抜けてホッとした。

ここからは、ずっと楽な道が続く。足元を気にしなくても、歩ける。天国にいるような気分だった。

そして、山の上の荘厳な冷たい空気ではなく、生暖かくて、ほんのり甘い植物の香りがまじった心地のいい風が僕を横切る。

終わったんだ…。

地上の田舎道の景色を見ながら、歩く。

しばらく歩くと、「ペロラス・ブリッジ・キャンプ場」についた。

ここで、チキンベーグルとフローズンヨーグルト、そしてコーラを買う。

うまい…。

そのあとは、TAハイカー専用のキャンプ場に移動した。誰もいなかった。

ここからはもう、派手な登りはない。明日は舗装路を歩き、明後日から快適な「クイーン・シャーロット・トラック」を四日歩く、そしてゴール地点の「シップ・コーブ」に着く。

頭の中では「日本に帰ってから何をするか」がざわめき始めていた。

またあの日常に戻る。

幸せだけど、悩みも多い日常。悩みが多いけど、幸せな日常。

無職生活に終止符をうって、怖いけど、働こうと決めていた。このテアラロアの経験を力に、前に進みたい。

どちらかというと、楽しみだった。

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著者

栃木県在住の34歳。
34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越したばかり。仕事もやめて、無職になる。同性愛者・躁うつ病患者(現在は寛解している)。趣味は登山。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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