【テアラロア Day68】バイバイ、リッチモンド

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ここにきて一番の豪雨

昨夜は雨が激しかった。

テントを叩く音がうるさくて夜中に何度も目が覚めたので、耳栓を探したけどなくなっていた。

途中トイレにも行きたくなり、雨に濡れながら用を足した。寝袋に戻り、濡れた身体を両手でこすりながら、暖をとった。

テントの床は、地面からの水で、ビショビショだった。

朝10時になると雨が上がってきたので、急いで支度をして歩き始める。

バイバイ、リッチモンド

そして、ベリーからメッセージがあった。

「クィーン・シャーロット・トラックに個室付きの安い宿がある」ことと、「このリッチモンド山脈は、これで人生最後だろうから、楽しんで」ということだった。

歩き始める。

そして、このリッチモンド山脈の最後のピークに立った。空が晴れてきて、躍動感のある雲が山の谷から空へと舞い上がっている。

神々しく感じた。

これが最後のリッチモンド山脈だ。リントール山をはじめ、いままで歩いてきた道に目を通し、別れを告げた。

空はどんどん晴れていった。気分も穏やかだった。

増水した川

しばらく歩くと、増水した川があらわれた。

流れが速い。大雨のせいで茶色く濁っていて、遠目からでは深さがわからない。

なるほど、これを渡るのか…。用心しながら、なるべく浅くて、流れのおそいルートを探しながら、渡った。

そのあと7回も、この増水した川を渡った。

怖かったけど、いままでの記憶が蘇った。サムやケイロブとたくさん川を渡った日。ローズやヤンたちと大きな川を渡った日。一人でアフリリ・リバーを渡った日…。

いままで、たくさん渡ってきたんだ。こんな川、なんてことない。

サムやケイロブに教わったとおり、ザックのバックルを一つ外し、ストックの紐には手を通さず、一人で渡渉した。

そのあとも歩いていると、眠気に襲われた。

昨日は豪雨で、あまり眠れなかったし、川の水で脚が冷えたせいで気持ちよくなったからだ。

気持ちは…

眠気の中でも、頭の中はゴールに向かうことでいっぱいだった。フラフラ歩きながら、日常生活のことをたくさん思い描いていた。

綺麗な森に囲まれたトレイルは、今の僕には、単なる一本の道と化していた。すれ違うハイカーと会話をしていても、心ここにあらずの状態になってしまう。

気持ちはもう、ウェリントン空港から日本に飛び立っていた。

だけど、あまりに眠たいし、ゴールが近いせいで身体の疲れを感じ始めていたので、いつもより早くテントを張った。

ゴールまでたったの154km。

近いのに、まだ遠い。

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著者

栃木県在住の34歳。
34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越したばかり。仕事もやめて、無職になる。同性愛者・躁うつ病患者(現在は寛解している)。趣味は登山。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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