【テアラロア Day59】テアラロアで二番目に高い標高1870m「ワイアウ・パス」へ!

もくじ

非日常が日常に変わる

今日もテントの中から、一日が始まる。

紅茶を沸かし、ご飯をつくり、歯磨きをし、服を着替えて、荷造りをする。

そして外に出て、テントをしまい、歩き始める。

いつものように二本のストックで、テンポよく歩いてゆく。目線は地面、ときどき顔を上げる。

すれ違う人と軽く挨拶を交わし、立ち話になると、頭の中にいくつかある、会話のテンプレートを口から出し、表情もつくる。

川を渡るときは、髪を洗い、ペットボトルの水を足す。

そして「あぁ、早く今日の目的地まで着いて、テントの中でのんびりしながら、美味しい晩ごはんを食べたいなぁ」と思いながら、歩く。

まるで街で生活していたときの、日常生活の感覚だ。ニュージーランドを歩き始めたときの、山の中を歩き始めたときの特別感はすっかり無くなって、この生活が当たり前になってしまった。

実は今日、同じ方向に歩く人に出会ったんだけど、最近はあまりにサッパリと過ごしているので、会話もサッパリと終わらせて、先に進んでしまった。

そして進んだ先で、ふと立ちどまり「あれ、そういえばさっき、同じ方向に歩く人と出会ったぞ!あぁ、もっとたくさん話したいことを話せばよかった!」と気が付いた。

ワイアウ・パス

そして今日はワイアウ・パスと呼ばれる、標高1870mの峠を登る。ちなみに名前にある「パス」とは、「峠」という意味だ。

この峠が、かなりキツい。

登りも下りも、斜面が急すぎる。

たまに現れるフラットな地面で立ちどまり、息つぎをしながら、なんとか登り続ける。

ただ、景色はとんでもなく綺麗だ。

写真をたくさん撮りながら歩く。

峠の終盤にくると、岩だらけになる。ストックをしまい、ロッククライミングのように両手両足で岩をよじ登る。

ルートを間違えると、よじ登った場所を今度は後向きに降り返さないといけなくなるので、登る前に慎重に見極める。

そして息を乱しながら、峠に到着した!

風を遮るものがないので、強風が身体に吹き付ける。身体に飛ばされそうなものを付けていないか確認してから、ザックを下ろし、周辺を歩いた。

すると、岩の地面のところどころにこんな植物を見つけた。

表面には柔らかい毛が生えていて、本体はやや硬い。まるでテニスボールのような感触だった。

しばらく歩いていたけど、風が強すぎて怖くなってきたので、峠を降りることにした。

この下りも、急斜面すぎて、滑ったり転けたりしながらだった。

登ってくる人が一人いたけど、彼は彼で急斜面を登っているのでしんどいし、僕は僕で下っているので危ないし、お互いに一言だけ声をかけて、それぞれ自分のことに集中した。

そして下った先でテントを張った。

テントの中の静寂

いつもはテントに入ると、日本の音楽をつけてリラックスする。

でも今日は違った。

ワイアウパスで疲れ切っていたので、音楽を付けなくても、川の流れる音、風でテントの生地が擦れる音、そしてテントの中の静寂を聞いているだけで、満たされた。

音楽は必要なかった。

紅茶を沸かして、飲みながら、そんな時間にひたっていると、僕の周りの時間だけゆっくりと流れているように感じる。

そして、ここがテアラロア1001km地点だ。

残りは299km。だいぶ現実的な数字になってきた。

明日は何を感じるだろうか。

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著者

栃木県在住の34歳。
34年間住んでいた愛媛県から、栃木県に引っ越したばかり。仕事もやめて、無職になる。同性愛者・躁うつ病患者(現在は寛解している)。趣味は登山。フィリピン人のパートナーと生活しながら、社会の壁を乗り越え、楽しい日々を送るため、人生をサバイバルしている。

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